壁の言の葉

unlucky hero your key

本。

『新・楊家将 血涙 上巻』読了

北方謙三著『新 楊家将 血涙 上巻』PHP文庫 読了 北方水滸伝に代表される彼の歴史小説の重要な特徴として、戦争の要が兵站にあるということを物語に溶け込ませている点がある。 物語はそこから目を逸らさないのである。 軍馬、食料、兵の補給が途絶えれば、…

『楊家将』読了。

北方謙三著『楊家将 上下』PHP文庫 読了 北方版水滸伝ほど人物の掘り下げがないように思われた。 映画でいえばアップが無い。 人物の個性を形作る微細な情報。つまり容姿や肉体的特徴、エピソードが少ない。 これが水滸伝ほどには個々の人物への愛着を呼ばな…

[http://news.biglobe.ne.jp/trend/1127/gad_131127_8294877063.html:title=「欲しい本くらい自分で探せ!ないならAmazonで買え」「老害と情弱とキモオタは書店にくんな」書店員の愚痴ツイートが波紋] ↑ あたしゃ本屋大好きですわ。 衝動的な大人買いをして…

ドストエフスキー著、安岡治子訳『地下室の手記』光文社古典新訳文庫 読了 恥ずかしながら何度目かの挑戦でこのたびようやっと新訳版で読了した次第。 めでたし、めでたし。 音読して一気にやっつけた。 難関はなんといっても延々と出口の無い独白の続く第一…

『カラマーゾフの妹』感想。

高野史緒著『カラマーゾフの妹』講談社 いわずもがなタイトル買いである。 トンデモ本かと思いきや、乱歩賞のお墨付きではないか。 いわずと知れた世界的名著『カラマーゾフの兄弟』。作者のドストエフスキーにはその続編第二部の構想があったというのは、亀…

『談志が死んだ』感想。

立川談四楼著『談志が死んだ』新潮社 夢中で読んだ。 一門の落語協会脱退騒動の発端となった古参弟子が、師匠を語る。 死後、その弟子たちによって様々な角度から語られた談志だが、この本のポイントは大雑把に言ってふたつ。 立川流旗揚げ前を知る弟子によ…

立川談四楼の『談志が死んだ』を読んでいる。 師弟だの友だちだの仲間だのというのは、大なり小なり他人の人生に影響し合う関係というわけであり。 となれば破門や絶交や喧嘩がつきものとも言えると。 すれば仲直りというものはそれら決別の賜物であると、気…

追伸。 胸の少年を代弁してくれる傑作ファンタジーがこれ。 大人になって読み返すと、後半の環境保護的メッセージが少々うるさい。 なるほど、正義というものはそれ自体拙いからこそ少年を必要とするらしい。 よい子はこんなブログ読んでないはずだが、少年…

ガルシア・マルケスの『百年の孤独』は、いったいいつになったら文庫化されるのだろう。 就寝前に目を通していたら、ついつい引き込まれてしまった。 これ初見はてこずるんだよね。 けど、再読をくりかえすほどに色彩がましていくの。 ☾☀闇生☆☽

冗談みたいなタイトルだが、現実にこんな本がある。 『今すぐフォロワーはやめなさい! 人生のリーダーになるために、やるべきこと、やってはいけないこと』 要は、この本をフォローするなと、 買うなと、 言っとるわけだ。 いいね!! ☾☀闇生☆☽

アガサ・クリスティー著、堀内静子訳『ABC殺人事件』ハヤカワ文庫 読了 不肖闇生はミステリーや謎解きものが苦手である、とはこれまでに書いたことがあっただろうか。 推理物マニアの旧友氏には何度もそれを告白しているのだが。 しかもコンプレックスとして…

なんとなく降りた駅の街を、当てもなく歩こうという休日企画。 なにが企画だか。 で今回は、読んでいた本の切りのいいところで、と決めた。 神保町である。 たまというバンドがかつて「神保町顔のTシャツの前で〜♪」と歌った、あの街である。 だれがそんな…

伊藤計劃著『ハーモニー』ハヤカワ文庫JA 読了。 以下、ネタバレのつぶやきです。 意志・意識とはそれ自体が一個ではなく。 人間のさまざまな言動や選択が、 その結果として得たある種のご褒美(たとえば快楽、カタルシスなど)によって動機付けられ、 繰り…

昨日紹介した旅本、平田真紀『一人書店TOUR』。 結局、今日一気読みしてしまったわいと。 現場の留守番勤務の待機時間に、つらつらとその女性離れした(失礼)文字を追っているうちに手書きの字面に慣れて、慣らされて、いつのまにかスピードアップ。 中盤の…

とまあ、 無事にローソン着でデジカメを受け取った次第であーる。 それはいい。 それはいい。 けど、どーしよーと。 おニューの道具というものは、あれだ。 いざそれを持つと、使おう使おうと思うほどに、使いそびれてしまうもので。 ましてやインストールだ…

喰らえ、 未来 ちゃん。 川島小鳥写真集『未来ちゃん』ナナロク社 ☾☀闇生☆☽

ひきつづきムーミンシリーズを読んでいる。 いま『ムーミン谷の仲間たち』。 この辺からなんだね。みんなの好きなスナフキンがスナフキン然としてくるのは。 彼に人気があるのは、孤独をたしなみ、それでいてその豊かな経験に基づくアドヴァイスをくれる、と…

『ムーミン谷の彗星』感想。

ヤンソン作、下村隆一訳『ムーミン谷の彗星』講談社文庫 読了 大彗星が落下してくるという、地球の終末に備えるムーミンたちの冒険が描かれている。 舞台がつねにその暗い影のなかにあることから、シリーズの中では異色作らしい。 とはいえムーミンたちはこ…

トーレ・ヤンソン作、山室静訳『たのしいムーミン一家』講談社文庫 ムーミンやその仲間たちを世間に知らしめたアニメとは別物、と考えていい。 アニメ版はスナフキンの達観した人生訓や道徳めいたセリフがなんといっても魅力で、日本人らしい努力や反省の奨…

この度、 ムーミンママのハンドバッグには『ぽんぽにつけるおしろい』が入っている。 と、知る。 帰りの電車。 その不意討ちに、ちょっと萌える。 ☾☀闇生☆☽

『虐殺器官』

伊藤計劃著『虐殺器官』ハヤカワ文庫 読了。 愛と戦争と。 愛他精神と殺人衝動と。 ひょっとすると人は誰しも『殺人欲』のようなものを持っているのではないのか。 それは普段、意識の外で凍結されてあるのだが、ふとしたはずみで解凍し、起動することがある…

『累犯障害者』感想。

山本譲司著『累犯障害者』新潮文庫 ここにはいわゆるタブーがある。 ゆえに、必読なのである。 本作は触法障害者の実態に迫ったノンフィクション。 繰りかえし犯罪をおこす身体障害者、および知的障害者についての取材と考察である。 著者は元衆議院議員、山…

『すべての美しい馬』感想。

コーマック・マッカーシー原作、ビリー・ボブ・ソーントン監督作『すべての美しい馬』DVDにて 監督は『スリング・ブレイド』を監督・主演して有名。 あらすじ。 原作はマッカーシーの国境三部作と言われるうちのひとつ。 物語はテキサスの牧場から国境をまた…

釈迦もキリストも、自身でつづった文章をのこさなかった。 ために巨大な多面体である彼らの姿は、複数の弟子たちから見た人物像を、それぞれに組み合わせて想像するほかない。 いや、 市井の平凡な人間においても、おそらくはそういう記憶の突き合わせの積み…

『立川談志の正体』感想。

快楽亭ブラック著『立川談志の正体 愛憎相克的落語家師弟論』彩流社 なんでもこの本の帯によれば「死ねば仏」とばかりに立川談志の死を悼み、その芸はむろんのこと人間性までもを称賛する風潮になっているのだという。 この本はそんなおりこうさんな論調に「…

たしかアメフトで、と言っていたのか。 とあるチームのファンたちは、 その12人目の選手としてチームと一体であるという意識をもつそうで。 その、いわば忠誠心の証として、背番号12のユニフォームを着て応援するのだそうだ。 その団結たるやすさまじく、 試…

コーマック・マッカーシーの『すべての美しい馬』を読みはじめた。 その、異様に長く、 かつ冗長とも思える独特のセンテンスをこなしてゆくうちに、 彼が好んで描く、国境の乾いた空気が恋しくなって、 つい、 映画『ノーカントリー』を観なおす。 久方ぶり…

ここんのとこ、 『スカイクロラ』シリーズの再読に耽り。 その透明なニヒリズムのつぶやきになんだか疲れちまって、 『HUNTER×HUNTER』の再読へと突入した次第である。 キャノピィの密室から、青天井の冒険へ。 モノローグから、ダイアローグへ。 G.I.編から…

西の魔女が死んだ。

梨木香歩著『西の魔女が死んだ』新潮文庫 読了 古き良き保守の生活を、帰化した元外国人が体現しているのがいい。 説教臭さが、それによって希釈されているし。 といって、 彼女は純日本風の生活を自らに強いているのではなく、 ごく自然に、 祖国と日本、ふ…

司馬遼太郎著、 『峠 上下巻』新潮文庫 読了。 幕末に吹き荒れた維新と言う風は、 大政奉還、 討幕という時流を駆って、 うずまいて、 ついに官軍という名の怪物に化けた。 この物語は、 その化け物が北へ北へと佐幕派を追い散らしていく、 いわば革命の仕上…