北方版水滸伝ほど人物の掘り下げがないように思われた。
映画でいえばアップが無い。
人物の個性を形作る微細な情報。つまり容姿や肉体的特徴、エピソードが少ない。
これが水滸伝ほどには個々の人物への愛着を呼ばない原因になっていると思う。
けれど、それはあらかじめ構想された原稿量によるものなのかもしれない。
水滸伝は十九巻という長大なもので、本作は上下たった二巻である。
つづく続編『新楊家将 血涙』もまた二巻。
並いる傑物たちひとりひとりの人物像を浮き彫りにしていけるだけの紙幅ではないのだろう。
物語はこの血涙を経て水滸伝に引き継がれ、そして楊令伝、岳飛伝へと繋がっていくという。
しばし北方謙三の歴史ロマンに浸りたい。
☾☀闇生☆☽