赤ひげ。

 「泥棒をするくらいなら私は乞食をするわ」

 これ、黒澤明が監督した『赤ひげ』のセリフ。 
 たしかお登与でしたっけ。
 加害者になるくらいなら、
 プライドを捨てる、という話ですな。



 熱を押して現場に出ていたことが発覚した仲間が、家庭の経済的事情を盾にした。
 たとえお前が無事でも持病のあるほかの誰かに感染させるリスクがある、と言ってはみた。
 実際、元喫煙者で糖尿のぜんそく持ちが同じ現場にいる。
 けれど、自分のことでいっぱいいっぱいのようだった。
 それが先の記事の「ご心配をおかけしました」に現れている。
 この騒ぎのなか、本音では誰もお前の体調など心配していないし、代りはいくらでもいる。
 まず、うつされることを心配するし、次に、うつす側になってしまうことを危惧する。


 誰だって自分と身内を優先的に考える。
 それは仕方ない。
 事情はそれぞれにあるのだろうし。
 さらに彼の行動を非難したとすれば、こんどは会社なり国の制度に鉾を向けることだろう。
 制度批判は制度批判で存分にやればいいだけのことだ。
 だいいち、敗戦も震災も制度が復興の陣頭に立ってきたわけではないでしょ?
 まずは国民みずからが自らを復興することから始めたんだ。
 ならば他を批判するまえにまず自分のふるまいを検めようよ。
 なにも今の時代に乞食をせよとは言わない。
 身の丈をこえた大げさなことも言わない。
 言わないけど、どうなんだよ。これ。
 本当に本当に他に手段はなかったのか?
 うちは有給の消化を推奨している会社だぞ。
 



 体調が変なら、休む。
 それだけのこと。




 闇生