壁の言の葉

unlucky hero your key

芝居。

音を立てる。

動物って静かだよな。弱者は天敵に気づかれぬよう。強者は獲物に逃げられぬよう。行動するときは己の気配を断って周囲の気配を探る。足音のでかいやつは大概ばかだ、とは談志の弁。などと、つらつら。夜な夜な景観スポットに出没する改造車の爆音に耳を塞ぎ…

願い。

作品と観賞者が一対一で対峙している。 その関係性において作品は作品になる。 いや、なろうとするのであって。 たとえ作者であってもその関係性には入り込めない。 むろん感受性や理解のエスコートとして評論だの解説だの創作の裏話や作者の思想的背景、生…

おっさんがゆく。

午後一時頃起床。 おそるおそる寝返りをうつ。 ぎっくり腰の症状は次第に収まってきており、腰痛といってもよい感触也。 ただし油断は禁物だ。 立ち上がろうとすると、痛みと例の力の入らない感覚に襲われる。 明日の夜勤も念のため休む、と会社に連絡。 冷…

愛でる人。

ふと思ったのだけれど、 イッセー尾形の一人芝居の代表的シリーズ『都市生活カタログ』て、ロートレック的視点を芝居でやろうとしたのではなかったかと。 とはいえ日本なので、デカダンにはならず。 閑古鳥のなくバーのバーテンや、意味が不明瞭なほど訛った…

親分さん。

小松政夫の訃報の大半がギャガーとしての小松政夫ばかりを扱っている。 故人を偲ぶのに誰もが知る代表的な一面を取沙汰して共感したがるのは致し方ない。 時代を背負った有名人を偲ぶことで、あたしたちは経てきた時間の共有点を確認し、慰撫したいのだ。 己…

役。

ゲイの役をゲイの俳優が演じることがない。 そこに差別がある、 という記事を見た。 どうだろう。これ。 呑兵衛の役を呑兵衛が演じるとうまくいかない、という話も聞く。 かえって下戸のほうが、他人の酔態を観察していることが多いので、酔っぱらいをうまく…

堕ちる。

コロナ騒動によって瀕死となった文化芸術エンタメを税金で守れという声があって。 いつからそんなにひ弱になったのか、と思ふのだ。芸術のヤツめ。 なっさけない。 あえて言うけれど、この程度で消滅するようなものなのか? 芸術て。 文化て。 むろん個々の…

12人の。

12nin-online.jimdofree.com 純粋にいえば演劇体験とはちがったことになるのだとおもうが、そこが面白そうだ。 まさにこの事態だからこその催しになる。 おそらくは単純なリモートでの読み合わせにはしないでしょ。 オリジナルは日本に陪審員制度が採用され…

NODA・MAP『Q』

NODA・MAP第23回公演『Q』:A Night At the Kabuki Inspired by A Night At The Opera 作・演出:野田秀樹 音楽:Queen 東京芸術劇場 プレイハウス 11/9(土) Q 久々の観劇。 チケットをゲットした時点で、席が2階(最上階)の最後列から2列目とわかって以来、…

どうしたおい。

役者志望です、という子が野田秀樹も蜷川も知らず。 寺山や唐にいたっては、名前すら聞いたこともないらしく。 シンガーソングライターをやってますという子が、ビートルズやストーンズを知らず、 ジョ二・ミッチェルやはっぴいえんどすらぴんと来ない。 べ…

おっさん。

ここのところ若い俳優さんと現場をご一緒する。 劇団に所属していたり、その手の事務所に所属していたり。 みんなシュッとしていて、さわやかだ。 まあ、警備員という仕事がら、舞台人とご一緒することは珍しくはなかったことではあるが、ここのところ急に増…

『贋作・桜の森の満開の下』感想。

NODA・MAP第22回公演『贋作・桜の森の満開の下』 坂口安吾作品集より 野田秀樹作・演出 東京芸術劇場プレイハウス。 妻夫木聡 耳男 深津絵里 夜長姫 天海祐希 オオアマ 古田新太 マナコ 秋山菜津子 ハンニャ 大倉孝二 青名人 など。 野田秀樹 ヒダの王 豪華…

贋作・桜の森の、とハンタ。

日曜、『贋作・桜の森の満開の下』東京芸術劇場プレイハウスにて。 平均年齢の高い桜の森だった。 あたしが最初に観たのは、発売された公演収録のビデオだから再演時のものだろうか。 夜長姫と耳男の絆というか、因縁というか。 その強さは今回のは薄かった…

あの頃。

シティ・ボーイズのライブを収録したDVDを観る。 『鍵のないトイレ』1992年と 『愚者の代弁者、西へ』1993年。 いずれも三木聡、シティ・ボーイズ作・演出。 はじめてみたから「懐かしい」という思いはない。 おもろい。 連作コントというのだろうか。 いわ…

『パス・オーバー』感想。

スパイク・リー監督作『パス・オーバー』アマゾン配信ドラマ アントワネット・ヌワンドゥ脚本 パス・オーバー 上演された芝居を収録。 あるいはこの収録のために上演されたのか。 不条理劇の古典『ゴドーを待ちながら』をたたき台にしている模様。 これにモ…

『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』感想。

ヴィム・ヴェンダース監督作『Pina 踊り続けるいのち』DVDにて。 『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』 予告編 2008年に急逝したコンテンポラリー・ダンス界の巨匠ピナ・バウシュを追想するドキュメンタリー。 ピナの代表的な公演からの部分抜粋も含ま…

『ピナ・バウシュ 夢の教室』感想。

アン・リンセル監督作『ピナ・バウシュ 夢の教室』DVDにて 世界的なコンテンポラリー・ダンスの舞踏家であり振付家でもあるピナ・バウシュによる貴重な演出時の記録。 演目はピナの代表作ともいえる『コンタクトホーフ』。 これをダンス未経験の十代の若者た…

『大きなトランクの中の箱』感想。

タニノクロウ作・演出 庭劇団ペニノ公演『大きなトランクの中の箱』DVDにて 回転舞台を四面四場に仕切った『はこぶね』がこの芝居の外郭を成す。 主人公は試験勉強にあけくれて気が付けば四十のおっさんになっていた受験生。 医師である父と二人暮らしで、権…

タトゥ、あり。

おもむろに上着を脱いで入れ墨を見せびらかして凄んで見せるという、まるで昭和のコントのようなチンピラ・キャラに遭遇した話を現場で聞く。 いまどきそんなベタなのほんとに居るのか、とみんなで笑ったのだが。 この日、当人と遭遇す。 目に入るものすべて…

聞こえて。

歌、というのは声の文化であり音の文化だ。 言霊の世界。 それは文字が輸入されるまえからのものであり。 倭(やまと)の魂(ソウル)。 これをまとめて記録するのに、 つまり万葉集のようなものを作るのに輸入されてきた文字を使った、という。 漢字ね。 音に漢…

『ロールシャッハ』感想。

小林賢太郎演劇作品『ロールシャッハ』DVDにて 脚本・演出・出演:小林賢太郎 出演:久ヶ沢徹/竹井亮介/辻本耕志/小林賢太郎 2012年12月 神奈川芸術劇場 収録 『開拓』を続けてきたとある国家。 ついにその領土拡大も世界の果てまで行きついてしまう。 世界の…

独楽。

『振り子とチーズケーキ』を観なおす。 『理想の自分』と『嫌いな自分』 『向上心』と『劣等感』 どちらかに傾けば、傾いたぶんだけ反対側へと引き戻されようとする、振り子。 なんて二元論的なとらえかたではなく。 対立する概念のはざまではバランスをとる…

シネマ歌舞伎『野田版 研ぎ辰の討たれ』感想。

木野錦花 作、平田兼三郎 脚色、野田秀樹 脚本・演出 中村勘三郎主演。 シネマ歌舞伎『研ぎ辰の討たれ』DVDにて いわゆる善であれ、 いわゆる悪であれ、 人の欲望なり好奇心を喚起することにはどちらも違いがなく。 その程度が、自分には実現されないほどと…

『振り子とチーズケーキ』感想。

小林賢太郎演劇作品『振り子とチーズケーキ』DVDにて 出演 竹井亮介、小林賢太郎 主人公は平凡な図書館員。 勤務先とコンビニと自宅を結んだトライアングルのなかだけで完結しかけている半生。ありふれたひとりもんの野郎にありがちな自堕落な日々を、惰性で…

『業音』再演版 感想。

松尾スズキ作・演出 日本総合悲劇協会の『業音』再演、池袋シアターイーストにて。(8/13) あらすじは公式でどうぞ。 ↓ otonakeikaku.jp しかしなんだ、役者の半数がなんだかんだでケツ出す芝居ってのもあれだな。 あれだよ。 生で見る他人のケツの威力。 そ…

『足跡姫』感想。

NODA-MAP第21回公演 野田秀樹作・演出『足跡姫』~時代錯誤冬幽霊~ 東京芸術劇場 プレイハウス 14時開演 S席 1階H列3番 座席の配置図をあらかじめチェックする。 ステージには近いがかなりシモテに寄っている。 しかし実際に会場についてみるとそのシモテ寄…

やさしくないチラシ。

ケービの同僚には芝居をやっているひとが何人かいる。 で、彼らの多くが宣伝として公演のチラシを会社においたりする。 でね、 観に行く・行かないは別としてあたしゃチラシそのものに興味があるので必ず手にしてはいるのだが。 少なくない確率で不親切なチ…

語れ。

縁あって、劇作もする役者さんに自作の戯曲を読ませてもらうことに。 GWとはいえ、今年は夜勤がはいっていて、なかなかゆっくりとは読めなかった。 なんせ戯曲である。 上演台本である。 言葉が声になって、役者が動いてこそのものである。 小説をよむ以上に…

おおかみこどもの雨と雪、テレビでやっちゃうのね。 感想をかきあぐねているうちに、このタイミングでくるとは。まったくぅ。あたしゃ長らく地デジ化難民のままなので、ノーマークでした。以下、休憩中に現場からガラケーで書くので簡単に。 獣姦の問題はと…

西川貴教、惰性のアンコールに苦言「演る側も義務ではない」 ↑これはまったく同意しますな。 よくぞ言ってくれたとすら思います。 常々同じことを感じていた方は、芝居でもコンサートでも、演者・観客双方におられたことでしょう。 かく云うあたしがそのひと…