タニノクロウ作・演出
庭劇団ペニノ公演『大きなトランクの中の箱』DVDにて
回転舞台を四面四場に仕切った『はこぶね』がこの芝居の外郭を成す。
主人公は試験勉強にあけくれて気が付けば四十のおっさんになっていた受験生。
医師である父と二人暮らしで、権威ある父を恐れに畏れて、いつか偉大な父のようになりたいと憧れ、そして密かに愛していた。
いや、
欲情していた……。
それも激しく。
第一場は主人公の部屋。
しみったれた昭和の風情。
その上階には足を悪くした父が起居している。
権威あり、そして偉大なる父ゆえに頭上に君臨している。
中年になるまで受験を失敗しつづけている原因は、その父への敬慕がこじれて生まれた雑念で。
つまるところが困った性癖の哀しき性欲で。
そんな満たされることの許されない欲望に翻弄される主人公を、豚と羊が異界へと導くのだ。
豚はつねに空腹で『暴食』の、
羊はいつも眠そうで『怠惰』の、
それぞれ『食欲』と『睡眠欲』という受験を阻害するふたつの悪魔なのだろう。
豚と羊は、階下から床をつらぬいている主人公の性器から精液を採取してはそれを糧に生きていた。
そして三人目に登場するのが牛男。
牛は半人半獣の逞しきミノタウロスを思わせ、その背景には禁じられた性愛があり、獣性をそなえる男性の象徴でもあり、つまりそれが主人公にとっての父だ。父性だ。
その父と合奏する、ということが和解であって、主人公にとっては許されることのない自己の解放なのだ。
合奏。
いわずもがなソレを意味します。
とまあ、ちょっとばかし、しゃっちょこばって書いてみた。
豚と羊と牛。
『食欲』と『睡魔』と『性欲』。
これ、受験生には三大悪魔なのではないでしょうか。
芝居は、実際にはオブジェからなにから男根、男根のオンパレードで。
女優さんは出演しているが、芝居として女性や母性はまったくの不在。
作者は元精神科医だという。
なので、ユングだのなんだのといったいかにもアタマのよさげなネタが背後に見えてしまう人もいるのだろう。そういうお方にはひょっとしたらこの精神分析的な劇構造がわかりやす過ぎて、鼻白むかもしれない。
あるいは一筋縄ではいかないのかもしれない。
なんせ、精神ですから。
残念ながら、あたしゃ詳しくないので、おバカとして楽しんだ。
『はこぶね』だけでも見てておもろかったわ。
んじゃ、まとめます。
彷徨えるか弱きチ〇コが、強きチ〇コを求める冒険ファンタジー劇です。
チ〇コの冒険。
よろしかったら、どうぞ。
☾☀闇生★☽