壁の言の葉

unlucky hero your key

音を立てる。



 愚かなのは自分のたてる音に無自覚な場合だと思う。
 ゲップ、あくび、いびき、衣擦れや身支度のガサゴソ音など。
 厳粛な場面でそれを立ててしまうひとに出くわすことが誰にでもあるだろう。


  

 意識的に音を立てるのは動物の場合なら威嚇、仲間との呼応や求愛、警報としてなどだろうか。
 違法マフラーの珍走団の騒音はむろん意識的なものだ。
 気分としては世間への威嚇に近いと思う。
 威嚇と云うのは優位に立とうとする行為であり、加えて相手に抵抗する術がないのならばそこに優越感・ドヤ感が附随する。
 つまり攻撃されない、されにくいからこその威嚇であって、それはやり逃げするからこそ成立する。
 その意味でもかっこ悪いと思う。




 自分が立てる音すべてに意識的であれ、




 とは野田秀樹の言葉だった。
 動きのある芝居のあと、台詞を喋っている役者があるのに後ろの方でぜいぜいはあはあと息を立てているのがいるという。
 もしくは足音をたてて移動する。
 むろん彼は無意識なのだろう。
 けれど、客の意識はその音の方に集中力を殺がれてしまう。




 自分が立てる音にも、放つ匂いにも、できるだけ意識しよう。
 それらも自分であって、
 いや少なくとも自分の欠片ではあって、
 自分である以上は責任をもつのが筋だろう。


 
 
 
 ☾☀闇生☆☽