壁の言の葉

unlucky hero your key

本。

昨日の明け方の濃霧はたまらんかったなあ。 ねえ。 あの白い闇の彼方を、得体のしれないクリーチャーがちらっと横切るんじゃないかと、あたしゃどきどきしておきました。 S・キングの『霧』の世界っす。 それはさておき、 サン=テグジュペリの『夜間飛行』…

立川志らく著『立川流鎖国論』梧桐書院 読了 全体の構成として、ふとい一本の流れを感じさせることはできなかったようで。 彼が主宰する劇団の話は、そこまで頁を割くほどのことなのかとも思い。 といって、ファンが期待するような談志にまつわるエピソード…

なんせ殺しまくるのだ。 撃ちまくりで、 轢きまくりで、 挙句の果てに、死にまくるのである。 なにがって、グランド・セフト・オートとかいうプレステ3のゲームの話。 舞台はアメリカに実在しそうな架空の都市。 そこでマフィア映画さながらのミッションを…

ふと、 明け方に目が覚めた。 テレビをつけっぱなしにして眠りこけていたらしく、画面には矢吹丈の姿だ。 どうやら『あしたのジョー2』が再放映されているようだった。 あたしにとってのジョー、 ようするに、あたしのジョーを言わせてもらうなら、いわゆる…

父の喜寿を祝おうということで週末、故郷に顔を出してきた。 兄貴の発案でホテルにて食事会とあいなったのであーる。 着ていくものがないので二十年前のスーツとコートを引っ張り出して、ウエストをちょっち直したのだが。 仕上がっていざ合わせてみると、き…

ジョン・カーペンター監督作『ザ・フォッグ』DVDにて 「霧が好き」 だなんてぬかしておきながら、この代表的『霧モノ』を見逃していたことに、気づいた。 ならばこれを機に、とさっそくレンタルしてみたぞと。 1980年公開。 名匠ジョン・カーペンター…

『ミスト』ネタバレ感想。

スティーヴン・キング原作、フランク・ダラボン監督作『ミスト』DVDにて。 なんせ霧に惹かれるのである。 「霧の中に何かがいる」 その不安と、静謐と、白い闇の明るさと。 見えないことによってかき立てられる想像力が、つまりはチラリズムが、強烈にそ…

立川キウイ著『万年前座』 感想。

立川キウイ著『万年前座 僕と師匠・談志の16年』新潮社 関東の落語の世界では、言わば身分制度といっていい格付けの倣いが厳格に設けられてあって。 下は『見習い』から始まって、 『前座』、 次いで『二つ目』、 そして『真打』と、出世するたびに名を変…

お気に入り本の再読は『ガダラの豚(中島らも)』から『梟の城(司馬遼太郎)』へといって、現在『嗤う伊右衛門(京極夏彦)』に。 京極版『四谷怪談』である。 以下はほんの少しだけ、あたしなりの拙い解釈を云う。 たったそれっぽっちでもネタバレと受けとられる…

ドストエフスキーの『罪と罰』。 亀山訳版がついに出そろったのね。 どうせだから再再読は、この新訳版でいこうかとたくらんでおるのです。 難解のようで、 いや深いには深いのですが、 構造的には刑事コロンボと同じ、と言ったのは野田秀樹だ。 つまり冒頭…

あれこれとお気に入りの小説を再読していくさなかで、ふと読みかけでとまっていたのを思い出した。 ガルシア・マルケス著『百年の孤独』。 この世界的に有名な著作を途中で投げ出してしまったのには訳があるのだ。 むろん言い訳だけど。 まずここにはね、 南…

『観光』の感想など。

ラッタウット・ラープチャルーンサップ著、 古屋美登里訳、 『観光』早川epiブック・プラネット 以下は、その感想をかねて。 不肖闇生、 たった一度だけ、海外に行ったことがある。 それは昭和の終わりの社員旅行で。 無駄に若さを費やした完全歩合制の、し…

マウス&ピース。

歯医者へ行ってきた。 睡眠時無呼吸症候群の予防用マウスピースができたのである。 調整と仕上げがあるので小一時間ほど費やしたが。 前回とった歯型は上と下のふたつで。 すなわち上顎と下顎の歯並びをおおうように、それぞれにU字型のができている。 それ…

たとえば人を殺めた過去を持つ人がいて。 やむにやまれぬ理由があってのことなのか、あるいは衝動的なものなのか、快楽的、もしくは愉快的なものなのかはここではおく。 して、法的な処置を経て罪を償ったか、あるいは逃亡中なのかをも。 そんな彼の目の前で…

合理主義vs神秘主義の構図で『もののけ姫』を語る。 …なーんてのは、少しも斬新な視点ではない。 と、のっけからえらそーにかましておく。 森を切り開いて鉄をつくるタタラ場と、その森に棲まう神々という対立関係でしたね。 これは少し前に取り沙汰された『…

そういえば、 この小説をヒントにしたのでしょうか。 少し前にちょっと騒がれましたが。 余命わずかの女性が、その死を前にして結婚式をあげるという。 友人たちの助けをかりて。 あたしゃそれをくわしく調べたわけではないのですが。 この美談。 のちに花嫁…

恋文。

連城三紀彦著『恋文』新潮文庫 読了 「恋文」 「紅き唇」 「十三年前の子守唄」 「ピエロ」 「私の叔父さん」収録。 「恋文」の女がつらい。 オンナは若くして病に侵され、もうあまり先がない事を知る。 振り返れば、明けても暮れても地味な仕事をこなすだけの乾いた人…

感じるツボ。

殊能将之著『ハサミ男』講談社文庫 読了 よくできている。 だなんて不遜にも言ってみた。 第十三回メフィスト賞受賞作だそうだ。 加えて『このミステリがすごい!』の年間ベスト第九位の経歴。 つまらないはずがないのだ。 案の定、まんまとしてやられてしま…

ホンモノとニセモノ。

鴻上尚史の『孤独と不安のレッスン』を読み直した。 終えて今、ただちにまた読み返している。 最初に読んだときには、孤独と不安について自分なりに漠然と考えていたことを、鴻上に整理してもらう印象であった。 横柄に言ってしまえば「知ってるよぉ、んなこ…

臭いの元を絶てっ。

「伝統を現代へ」 立川談志はそう言うのだ。 けれど、よく考えると伝統の「伝」に、すでに伝達の意味が込められてあるではないか。 いわずもがな一切は過去へは届かないわけであり。 未来にむけてしか運動しない。 これを読むあなただって、いまここでタイプ…

「私」は、どこ?

北村薫、宮部みゆき編 『名短編、ここにあり』ちくま文庫 半村良「となりの宇宙人」 黒井千次「冷たい仕事」 小松左京「むかしばなし」 城山三郎「隠し芸の男」 吉村昭「少女架刑」 吉行淳之介「あしたの夕刊」 山口瞳「穴――考える人たち」 多岐川恭「網」 …

『火星年代記』

レイ・ブラッドベリ著、 小笠原豊樹訳『火星年代記』早川書房 以下はその感想です。 ネタバレと解釈される箇所もあるかもしれませんので、ご注意を。 野田秀樹の新作芝居『パイパー』。 その感想は、先月ここに書いたばかりであーる。 それで、この芝居を観…

んで、 ブラッドベリの『火星年代記』を読んでみた。 詳しくは平成二十一年如月の章。の2月2日に記したが。 確かに、火星への入植と滅亡を、年代記的に描いたという点では、同じ流れ。 けれど、切り口はまったくの別物ですな。 ブラッドベリのは、たかだか…

ビーフカレーの和。

折り紙とビーフカレー。 井沢元彦はこのふたつを日本の文化を象徴するものとしている。 折り紙は非常に制約の多い遊びであり、芸術でもある。 決して糊やハサミを使わずに、正方形の紙を折ることだけで表現していく。 この、不合理なまでの制約。 愛すべき、…

『マルコヴィッチの穴』という映画をご存知だろうか。 名優ジョン・マルコヴィッチの内部に通じるという、摩訶不思議のトンネルがあって。 そこに入れば数分間だけ実在のマルコヴィッチの視点になれる、というのだ。 言い換えれば、マルコヴィッチを『着』て…

四分の一。

カート・ヴォネガット著、 浅倉久志訳『スラップスティック』ハヤカワ文庫 この寓意に満ちた物語のなかで――、 主人公は、 「LONESOME NO MORE!」 (もう、孤独じゃない!) を合言葉に米国大統領の座におさまる。 そして『拡大家族』なる政策…

たとえば、 赤穂浪士の討ち入り。 四十七士の面々は、見事、主君の敵を討ってヒーローとなった。 唐突になんだとお思いでしょうが。 最初に言っとく。長いよ、今日のは。 敵討ちは武士にとっての正義だもんで。 んが、それは将軍さまのお膝元でのこと。 花の…

おやすみ、スナイパー。

SM雑誌の老舗。 といえば月刊『S&Mスナイパー』だ。 これが年内いっぱいで、一旦休刊になるんだそうで。 あ。 あたくし闇生は、エロDVD屋でございます。 次号が最後。 休刊とはいえ、編集部は全員解雇と聞くから、廃刊といっていいんじゃないでしょうか。 だ…

赤めだか。

立川談春著『赤めだか』扶桑社 一気に読んだ。 師弟関係というのは、やっぱ俺にとってツボなのだ。 たまらん。 ましてや、視点がやさしくて。 まだ駆け出しの弟子が仰ぎ見た、天才立川談志という。 だから、あたしのような凡人にも共感しやすいのである。 そ…

空間的、とは。

よく言われれることだが、たとえば女性が、自分でそのイヤリングを外すとき。 右の耳のは右手で。 左の耳のは左手で。 という具合に、本来はそうするのが一番合理的であるのに、あえて手を交差させることがある。 右耳のを左手で、と。 そうすることで、ふる…