壁の言の葉

unlucky hero your key

おやすみ、スナイパー。

S&Mスナイパー



 SM雑誌の老舗。
 といえば月刊『S&Mスナイパー』だ。
 これが年内いっぱいで、一旦休刊になるんだそうで。
 

 あ。
 あたくし闇生は、エロDVD屋でございます。

 
 次号が最後。
 休刊とはいえ、編集部は全員解雇と聞くから、廃刊といっていいんじゃないでしょうか。
 だったら、いっそ「卒業」でございますと。
 そうやったほうが、方便まるだしで、おもしろい。


 思えば今年になって、長年親しまれてきた装丁を変えていたっけ。
 ホチキスどめをやめて、きりりと角ばったムックに。
 表紙の美人画が、スタイリッシュでボンデージな写真に。
 ときにDVDを付けたり、価格を変えたりと。
 しかし、その迷走ぶりは、お客さんを困惑させてもいたのであーる。


「あんなどーでもいいオマケDVDなんかいらないよぉ」


 そのぶん、安くせーよと。
 質をあげろと。
 他社エロ本が、こぞってDVDを付け出したその風潮に、あろうことか老舗が流されたのだ。
 ライバル誌『マニア倶楽部』も、同じように揺れていたところからすると、やはり売れないのだろうな。雑誌。


 うちの店の動きだけで考えると、まだまだいますけどね。
 動画ではなくて、あくまで雑誌派という方々が。
 ええ。
 いますとも。
 『マニア倶楽部』なんかは、二冊ずつ購入される方もいて。
 一冊はオカズに。
 もう一冊は保存用に、と。
 しかし、近年DVDを付けたりしてからは、あきらかに質が落ちたとおっしゃって、あっさり購読をおやめになってる。そのお方。

 
 ゲイ雑誌の『さぶ』が廃刊になったのは、何年前だったろうか。
 さすがに読んだことはないし、うちの店のカラーでもないから扱ったこともない。
 しかし当時、ちょっとしたニュースになったので、覚えているのだ。
 問題はゲイ云々ではなかった。
 ネットの普及率を反映した問題として、テレビで取り上げられていたのだ。
 あの雑誌は同じ趣向の人々の出会いの場でもあったのである。
 昔懐かしい「ペンパル」なんてところから、地道に肉筆でよしみを深めていったりしたのだろうが、今やネットだ。
 クリックいっこで、即コンタクトである。
 クリコンだ。


 んでもって、このたびのS&Mスナイパーだ。
 個人的には、全体的にアートな格調も高まってもいた、と思う。
 ましてやアラーキーが素人を撮るページだとか、悪くはないと思うのだ。
 きれいだよ。
 んが、いかんせん世間のS&Mが細分化しすぎてしまった。
 それを追いかけて、それこそ幕の内弁当のように、あれもこれもちょっとずつ特集したところで、なんになろう。
 今や客の目はメタボよ。
 肥えてんのよ。
 己の趣向の特化した『点』だけを、ネットで渉猟するのに慣れきっている。
 そんな「人それぞれ」な需要を、一冊の雑誌で、どれだけ満足させることができるというのか。
 といって、極度に特化した記事で雑誌をまとめたところで、それでは流通と回収がね。
 『Weekly ぴあ』も縮小するのだとか。
 細分化して、特化するのは、選択肢が豊かになることにもなるから、まことによろしい。
 けれどね、
 全体を大きく「ゆるやかに」包んでいる価値観というか、中心と言おうか、そういうのまで失うのは、地図のなかに現在地を見失うような気がするぞ。

 
 仮に、スナイパーや、ぴあを、北極星に見立てればだ、ともかくも自分の彷徨う特化の目安には、なるでしょうに。


 と、そこまで話を大きくするかという。
 やれやれ。
 かく言う闇生。
 激痛系の写真が増え始めてからは、スナイパー、苦手っす。
 血とか、
 肉片とか、
 ページを繰っていると、不意に出くわしますから。
 うっかりすると、出会いがしらに虎と馬にのされちまいますから。
 ま、
 そういう商品も扱ってますので、あまり大きな声ではいえんのですがね。
 はい。




 ☾☀闇生☆☽