壁の言の葉

unlucky hero your key


 零時過ぎのメールで跳び起きる。
 すわ、現場からの自動警報メールか。
 この時間ならそれ以外に考えられない。というような対人関係しかあたしゃ知らない。
 見れば喪中メールであった。
 年賀状を遠慮する旨、簡潔にしたためられてある。
 となるとあたくし個人へのものではなく、アドレス全員への告知なのだろう。
 著名が無いので、誰からのものなのかとしばし推理する。
 先日、自発的なアクセスをいただけない方々のアドレスを削除したので、自動表示されなくなっているのである。
 いわずもがな、それにも関わらずメールしてしまうこちらの性分を、つまり先方からすればめんどくささを、警戒してのことなのであった。
 そうか。
 全員送信なら、先方のアドレスにこちらのデータが残留している以上はこういうことになるのだ。
 まさかあたくし風情にまで届いているなど、当人ですら自覚できないに違いない。
 アドレスを睨んで記憶を辿る。
 誰だっけ、このアホっぽいセンス。
 哀しいかな、喪中であってもアドレスを決定した時のテンションは訂正できない。
 その間抜けっぷりに甘えて、ただちに喪中見舞いを返しておいた。
 喪中であってもコミケには行くような奴に違いないのだし。
 と決めつけ、
 時間的にみて、その打ち上げの二次会、三次会のあとのことであろうと。
 アニソン大会で〆たカラオケ帰りであろうと。


 さて、


 眼が冴えてしまった。
 大晦日から四日まで勤務が続く。
 現場は止まっているが、あたくしひとり、留守番として朝晩の点検に入る。
 レンタルビデオ屋時代、エロDVD屋時代を通じて毎度のことながらこの時期、自分から申し出て勤務している。
 仕方が無い。
 誰かが出なくてはならないのなら、出るよ。
 自分が休んでいるときに誰かが働いているのが気になってしまうのなら、自分でやるよ。
 そういうこった。
 いや。もはやそれはカッコつけになってしまうお年頃になってしまった。
 こっちは独りもん、独り暮らしのおっさんなのである。
 世間並みに正月を休まなくてはならない義務がない。
 なので三十日が年内最後の休日。
 風邪が治りかけなので、大人しくしていた次第。
 RIVENなんぞ引っ張り出して、久々にプレイしてみる。
 数年ぶりだというのに、今まで行けなかったところに行けるようになる。
 案の定、あらたな仕掛けが現われて立ち往生す。
 放り出して近所の銀行に立ち寄る。
 毎度のことながらの混雑。
 街角のATMへの行列も含めて風物詩だね。こうなると。
 お年寄りによる新札への両替が多く見受けられる。
 千円札は終了との告知が出ていたから、孫へのお年玉だろうか。
 毎年のことなのに、やっぱこの時期まで引っ張って混雑にはまるのだろう。この人たちは。
 と、自分も思われているに違いないのだろう。







 ところで、
 先日こんな記事を見かけた。
 昨今、写真を撮るのが流行っていて。
 それがブログやツイッターへのネタとしてのことであるらしく。
 そのせいで、若者が社会や世間をネタとして見る癖になっている云々。


 それの何が悪い。


 たとえば短歌や俳句をやるようになって、生活や自然の細部を観察するようになってしまうのは、良くないことだろうか。
 いつしか詩になる出来ごと、物ごとにアンテナを張る癖がついたならば、漫然と惰性に拠って生存しているよりよっぽど日々に張りがあると思うのだが。
 画家が景色などの対象を愛でるのも、
 あるいは詩人が詩想を練る、というのも元をただせばそういうことだろうに。
 ブログもツイッターもなかった時代でもかつてVOWという投稿雑誌があった。
 えらく流行った。
 あれに触発されて、読者は見慣れた生活圏をあらためて観察し直したはずである。
 ありふれた日常を面白がろうとしたはずである。
 観察し、想像をかきたて、妄想に耽った。
 面白がるために周囲を観察した。
 この能力。馬鹿にならないのではないのか。
 おそらくは幸福の秘訣ですらあると思ふ。
 世界の秘密と言っていい。
 問題は、つまらんネタでもアップされてしまうということと。
 故意によるネタはさぶい。野暮。と見極められない観賞眼の方なのだ。
 ボツ、というプロによる淘汰をまぬがれているぶん、こっちでそれをやらなきゃならない。
 ネタをあげる本人よりも、試されているのはそれに反応するセンスの方だろう。






 とまあ、
 そんなこんなのこの過疎ブログ。
 おつかれです。
 何事にも特化しないようにと心がけて、はや数年。
 何事にも特化できないだけのことでした。
 今年一年、一度だけでも訪れたことがあったあなたに。
 そして訪れなかった奴らにも、







 ざまみろ。






 追伸。
 ミスター・伴内多羅尾。急逝。
 はっぴいえんどのメンバーのなかでとりわけ超然として、業界の外で悠々自適に過ごしていらっしゃるようで、長生きのイメージしか抱けなかったのに。
 嗚呼、こんなに早くか。
「お正月と言え〜ば♪」
 盟友細野さんの心境が、気がかり。




 合掌。




 ☾☀闇生拝☆☽