壁の言の葉

unlucky hero your key


 この年の瀬にきて、急展開である。
 なんと、
 あたくし闇生の本業であるところのエロDVD屋に存続の危機が。
 ジジが。
 トンボが。
 なんと、だなんてつけたところで所詮は私ごとなのですがね。
 つけてみました。
 あえて。
 なんか人気ブログっぽくなるので。
 

 その原因はというと、決して売上の低迷にはない。
 そこは断じて、ないのだ。
 ひとえに法律的側面によるものなのであった。
 突如として公僕のお方が現われて申するに。


「許可とってねえだろ、ここ」


 なんでも風営法にひっかかるとのことで。
 そんなまさかと思いきや、店長に確認したところ、そのまさかだったというオチ。
 うそおん。
 そういえば、
 入社当初に不肖闇生が任された店舗は、入口付近に古臭い一般作のVHSが陳列されてあったっけ。
 トップガンとか。
 インディジョーンズとか。
 フラッシュダンスとか。
 なんでまた今どきというようなのが、埃をかぶってあったんだわ。
 店舗面積の何割だったかは失念したが、それをもってここは性風俗専門店ではないと。
 そういうことで法的側面をクリアにするのが、この業界のならわしといおうか。
 方便といおうか。
 その店が閉店とあいなり、あたしは現在の本陣に混ぜてもらうということになったのだが。
 本陣は一面ぜんぶがエロだったわけ。
 それで何年も営業しているから、あたくしもまったく不審に思わず。
 ましてや店舗スタッフとしてはアトガマ風情であるからして、日々のお仕事に勤しんだのだった。
 んで、
 今にして思う。
 不覚だったと。


 来週、
 我らが店長が出頭する。
 して、もろもろの事情を問いだされることになる。
 情けない。
 無知から出た災いであるからして、まったくもって情けない。
 なにやってんだか。
 これでケービ一本になってしまうのかな。
 副業が本業になっちゃうのか。
 となると、収入も激減だ。
 いやはや、まいった。
 凹みはするが、こんなつまんねえミスでっていうのが、凹みを超えて逆側にでっぱるよ。
 なに言ってんだか。


 あほくさい。


 現在、経営者をふくめてたった三人のちっぽけな店である。
 それだけでシフトをやりくりしている。
 なのに、この一年半。店長はみずからの労働時間を減らし続けた。
 有体にいえば、なまけた。
 腰の手術をきっかけに。
 それが完治しても、なまけつづけた。
 それが如実に営業姿勢に現れていた。
 ちょうど月給制を打ちきって、日給換算に切り替えたときからで。
 つまり露骨な人件費削減だったわけで。
 そこへきてひとりがなまければ、当然そのぶん我々スタッフの仕事量が増える。
 収入が減って仕事が増えるのは、誰だってあまりよろしいとは思わない。
 ましてや事情が事情だけに、腑に落ちない。
 むろん、それは今回の一件の直接の原因ではないが、なんだか流れとして頷けてしまうのだな。
 組織というのはトップから崩れる。
 下は、上の短所ばかりを真似る。
 それを権力で封じれば、不満は潜在化して、見えない根っこから腐る。
 そこへきて、これだ。
 因果関係などないはずなのに、思ってしまうのだ。
 さもありなん、と。




 早朝からラジオがピアソラをかけている。
 文春の談春を読む。
 談志追悼の一文である。







 ☾☀闇生☆☽
 

 それにしても、
 この年の瀬にしょっぴくってのは、どうなの?