なんせ殺しまくるのだ。
撃ちまくりで、
轢きまくりで、
挙句の果てに、死にまくるのである。
なにがって、グランド・セフト・オートとかいうプレステ3のゲームの話。
舞台はアメリカに実在しそうな架空の都市。
そこでマフィア映画さながらのミッションをこなすのが目的らしいのだが、ともかくも自由なのね。
どこに行こうが、
通りすがりの車を強奪しようが、
それで通行人を撥ねようがね。どうやら。
むろんそのような違法行為はゲーム内の警察に執拗に追撃されるし、場合によっては射殺されもするのだが。
この群がる警官だって、撥ね殺せちまうのだ。
それはもう、ゴミくずのようにばっつんばっつん轢き散らかしていく。
んで、
ツボはやっぱこの『自由』なるものだろう。
そう言われると、哀しいかなヒトっつーもんは真っ先に日常ではゆるされないことをおっぱじめたくなるもので。
なおかつ、侵すのに思考や忍耐のもっとも要らないタブーを選ぶ。
とどのつまりが、殺す。
盗む。
やっちまう。
とてもじゃないが、往来でひとり瞑想に明け暮れて悟りを開き、その境地や教えを経典にまとめ、出版し、地道に布教して歩こうなんてヤツは、出てこない。
そこはひとつ、決めつけちまう。
まあ、それでこそのゲームというガス抜きなのでしょうが。
けど、
その動画をYoutubeで見ているかぎりは、それほど面白いとも思わない。
事実、
仕事の合間にそんな殺しまくりの動画を、あたくしと肩を並べてみていた同僚は、
「ふう〜ん」
鼻で嗤ったものだ。
んが、
んが、
んがっ、
翌日にはちゃっかり購入して、
その翌週には後輩をその街に引きずりこんでいるという有り様ではないか。
てか、
あえて言っちまおう、体たらくと。
むずがる後輩に焦れて、ソフトをプレゼントするほどの強引さだもの。
これ、ネット上で他人とチームを組んだり、対戦したりもできるというのだな。
ヘッドセットによって生声のコミュニケーションができるから、
「志村っ。うしろっ、うしろっ」
的なやりとりで協力し合えるという。なるほど、それじゃあ引きずり込みたくもなるよね。
なんでも、射殺されると画面がモノクロになるのだそうで。
して変態となった自分のキャラを…、
もとい、
死体となった自分のキャラを見るはめになるのだが、どこの世界にも必ず意地の悪い奴がいるもので。
死んでもなお、これ見よがしにその頭部に銃弾を撃ち続けているんだそうな。
淡々と。
いいように蹴り続けているのもいるとかいうよ。
はらたつう。
その悔しさったらないっつーはなしである。
でもって「んなろー」と、
もっとキレイになって見返してやるわっ。
もとい、
もっとうまくなって復讐してやるわっ。
リプレイして、
死んで、死んで、繰り返して、
気が付けば「烏、カア」で朝でござると。
不肖闇生も、執拗に勧誘された。
ありがたし。
けど、
帰宅してなお、仕事仲間に時間を拘束されたいとは思わんよ。さすがに思わん。
残念なまでのさびしがり屋ではあるのだが、そればかりはご免こうむりたい。
こうむろう。
切り上げの潮時も、気を使うだろうし。
ねえ。
なにより、こう思う。
それこそが不自由だろうに。
ワークシェアで給与と出勤日を半分にされてもなお、そんな余裕ぶっこいていられる『親もと』の子らと、足並み揃えていられますかってんだ。
あれした、これした、
あれ買った、これ買ったと、まったく。
こっちゃバイトよ、バイト。
今日なんか雨で工事が中止だし。
つまりは予定されていたケービも中止なわけだし。
そのぶん収入が減るのだし。
でもさ、
これを機にと思って、免許の更新に行ってきたよ。
往復一時間の道のりをてくてくとさ、警察署まで。
考えてみれば、こんなときでもないと顔写真なんて撮らないもので。
なぜって、
大嫌いだから。
てめえの顔が。
その人相が。
で、例の交通安全の講習ビデオをお行儀よく観賞してさ。
うんうん、なんて賢しらに頷いてもみたのだが、頭の中では、あのモニターでグランド・セフト・オートの轢きまくり映像流したらウケるなあ、なんて思ったりした。
ここ数日、本を読みふけってる。
ふだんはそんなに読まないのだが、たま〜にハマってしまうことがある。
これまでも、安部公房。司馬遼太郎には随分とハメられたもので。
それこそすぽん、と根元までやられたっけ。
おかげで視力はガタ落ち。
やべえやべえと怖れていたけど、辛うじてお咎めはなかったよ。
これで心おきなくゲームができる。
じゃなかった、あの本が読める。
殺しまくりも、轢きまくりもしないが、
しばし読みまくる。
どの本かは、教えない。
こうして今日の『自由』を、あたしはだらだらと塗りつぶすのだ。
☾☀闇生☆☽
…。