『ムーミン谷の彗星』感想。

ムーミン谷の彗星


 ヤンソン作、下村隆一訳『ムーミン谷の彗星』講談社文庫 読了


 大彗星が落下してくるという、地球の終末に備えるムーミンたちの冒険が描かれている。
 舞台がつねにその暗い影のなかにあることから、シリーズの中では異色作らしい。
 とはいえムーミンたちはここでも相変わらずの愛すべきとんちんかんであり。
 彗星の接近よりも、それぞれが私的で大切な何かにこだわりを持って暮らしている。
 客観的に眺めればおまぬけだ。
 けれど、そういうもんだろ。
 そういうちっぽけな拠り所で、なんとかなっている。


 容赦もなく淡々と確実に終末へと向かっていく時間という絶対的な残酷に、タル・ベーラ監督の『ニーチェの馬』を連想する。
 彼らは健気にもそれに足掻いた。
 生きるということは壮絶で、
 終えるということ止まるということであった。
 止めるということ。
 役割を放棄するということ。
 頑張らないということ。
 そこへいくと、ムーミンたちはやはり妖精だ。
 終末さえ他人事にして遊んでいるふしがある。




 出版されたのは他のシリーズ作より遅れたが、執筆されたのはこれが最初だという。
 

 ☾☀闇生☆☽