愛と戦争と。
愛他精神と殺人衝動と。
ひょっとすると人は誰しも『殺人欲』のようなものを持っているのではないのか。
それは普段、意識の外で凍結されてあるのだが、ふとしたはずみで解凍し、起動することがあるのではないか。
闇生はそう考えていたことがある。
もしそうだとすれば、それを解凍し、起動させる鍵はいったい何なのか。
とまあ、幼稚で漠然とした空想どまりで終わったのは言うまでもない。
けれど、それゆえにこの本を読みつつ思ったのだ。
似たようなことを空想する人はいるのだな、と。
しかしそこから先が天と地ほどに異なる。
芸術というものは、おしなべて発想そのものは子供である。して、それを作品にするのが技術(うで)なのだ。とは松本人志の弁だが。
そこへいくとこの早逝の天才作家は、気の遠くなるほどの緻密で執拗な構築を繰り返し、練磨して、童心の残酷を絢爛豪華な地獄絵図としてありありと現出してのけている。
その技術。執念。イマジネーション。
凄味すら感じるほどに。
あの宮部みゆきにして「3回生まれ変わっても、こんなにすごいものは書けない」との言葉を帯に寄せたほどなのだ。
はたして大量殺戮を引き起こす虐殺器官とは。
世界をまたにかけ、人びとのそれを刺激して虐殺の種をまき続けるジョン・ポールとは。
SFを普段読まない人には、この世界での専門用語、固有名詞がしちめんどくさいことになるでしょう。
けれど、
それを差っぴいても、おつりが定価をはるかに凌ぎます。
☾☀闇生☆☽