壁の言の葉

unlucky hero your key

映画。

ちょいと時間ができたので、 久方ぶりに『七人の侍』を観賞。 絵にうなり、 構図にうなり、 それはもういちいちうなり、 菊千代に笑って笑って、そして泣いた。 舞台は士農工商が確立されるまえの『戦国時代』だというのに、 「お侍さま〜」 と農民が侍に土…

『モーターサイクル・ダイヤリーズ』感想。

ウォルター・サレス監督作。 ガエル・ガルシア・ベルナル主演。 『モーターサイクル・ダイヤリーズ』DVDにて。 のちに有名な革命戦士となる一人の男。 チェ・ゲバラ。 若き日の彼には三十歳までに夢をかなえるという目標があった。 南米大陸の縦断旅行である…

無料配信で『北の零年』を観る。 淡路から未開の蝦夷地に移封となったさまよえる侍たち。 廃藩置県により主君という存在が忽然と消滅して、一同が茫然とするくだりがある。 以後、何者にも仕えないとの決意表明としてか、彼らは髷を切り落とす。 問題はその…

『立喰師列伝』感想。

押井守原作・脚本・監督作『立喰師列伝』DVDにて 彼らのその存在自体、 戦後日本への問いかけではなかったのか。 いわゆる戦後の焼け野原の露店商からはじまり、 闇市、 個人営業のそば屋、 牛丼屋のチェーン展開、 フランチャイズ制のファストフード店まで…

『トゥルー・グリット』感想。

ジョエル&イーサン・コーエン監督作品『トゥルー・グリット』DVDにて。 あえて言っちゃおか。 痛快だったと。 なにがって、物語が、ではなく。 テンガロンハットにウエスタンブーツの粗暴な男たち世界を、現代のおりこーさんな価値観で裁いてない点。そこが…

『鉄コン筋クリート』感想。

松本大洋原作、マイケル・アリアス監督作『鉄コン筋クリート』DVDにて 原作に出会ったのは何年まえだったか。 そのときの印象は、必ずしも全面的な肯定ではなかった。 正直に言えば、新たな才能への嫉妬のようなものを抱いたものだ。 有体にいえば、ツンデレ…

『英国王のスピーチ』感想。

『英国王のスピーチ』DVDにて のちに英国王ジョージ六世となったヨーク公が、自らの吃音癖を克服してゆく物語。 それだけ。 予告にあるとおりである。 以下、ネタバレあらすじ。 ジョージ五世には三人の息子がおり、 長男が人妻キラーで遊び人のデイビッド(…

『すべての美しい馬』感想。

コーマック・マッカーシー原作、ビリー・ボブ・ソーントン監督作『すべての美しい馬』DVDにて 監督は『スリング・ブレイド』を監督・主演して有名。 あらすじ。 原作はマッカーシーの国境三部作と言われるうちのひとつ。 物語はテキサスの牧場から国境をまた…

『once ダブリンの街角で』感想。

『once ダブリンの街角で』DVDにて アイルランドの首都ダブリンのとある街頭。 ギターを奏でて歌うひとりの男がいる。 その使い古したエレアコのボディには穴が開いていて。 どうやら長年のピッキングによって削れて開いてしまったようなのだが。 昼はウ…

夜更かしして、レンタルしっぱなしだったもう一枚、『ONCE ダブリンの街角で』をたった今観終わったところ。 予告編はこちら。 ↓ http://youtu.be/I6xIF92OUos ささやかで、さわやか。 若々しい良作なり。 感想はのちほど。 ☾☀闇生☆☽

『アンナと過ごした4日間』感想。

とかなんとか抜かしつつ、 結局観たぜ。 まずは『アンナと過ごした4日間』。 類型として『仕立て屋の恋』を思い出さずにはおられなかった。 友だちもいない。 寝たきりの祖母と二人暮らしの、社会的にも冴えないひとりもんのおっさんレオンが、とある女性に…

タル・ベーラ監督・脚本作『ニーチェの馬』渋谷シアター・イメージ・フォーラムにて 圧巻である。 どのカットも完璧で、モノクロ表現の極致を目撃した思いがした。 限界まで無駄をそぎ落として追及された寓話性。 そのくせ、絶望を絶望として観客に体感させ…

『21グラム』感想。

アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作『21グラム』DVDにて 前作『アモーレス・ペロス』同様に今作も三つの舞台が描かれる。 それがある事故でつながる。というのも同様である。 カメラはそれぞれの舞台を時間軸にそってハシゴしていくだけではない…

『ザ・バンク 堕ちた巨像』感想。

トム・ティクヴァ監督・脚本『ザ・バンク 堕ちた巨像』DVDにて 以下、ネタバレでいく。 ストーリー自体は、これといって凝っているわけではない。 世界的な巨大銀行が、国際的な兵器売買にからんでいるという。 貧しい紛争国に渡りを付けてそこへ取り入り、…

『アモーレス・ペロス』感想。

アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作『アモーレス・ペロス』DVDにて。 なんせ監督の名前からしてこうだもの。 絶対に覚えられないというゆるぎない自信がある。 あたくし的にはアレハンドロ・ホドロフスキーが限界なのだ。 この名前を淀みなくすら…

『正当に評価されたい、 という強迫観念が、悲劇を生む』 アーサー・ミラー。 先日ここで触れたDVD『摩天楼を夢みて』の特典映像にあった言葉である。 あの映画は不動産セールスマンの明暗に焦点をあてていた。 よって、代表作に『セールスマンの死』をもつ…

『摩天楼を夢みて』

昼飯休憩に立ち寄ったブックオフで、めっけもん。 まさか『摩天楼を夢みて』が中古で、しかも千円足らずで陳列されてるなんて。 もうね、 思わず「おおお」と、声を洩らしてしまいました。 元は舞台劇で、 デヴィッド・マメットのピュリッツァー賞受賞作なの…

『スラムドッグ・ミリオネア』感想。

ダニー・ボイル監督作『スラムドッグ・ミリオネア』DVDにて なんせ劇場で観た予告編には、みのもんたが出ていたもので。 なんといおうか、 その印象がもとでこの映画、なんとはなしに遠ざけていた。 ご存知のように、クイズ・ミリオネアというあの企画自体が…

ジム・ジャームッシュ監督作『リミッツ・オブ・コントロール』DVDにて こういうのに長々とした感想を書くのは、野暮天というものだろう。 はて。 こういうの、とはどういうのかというと、 いわゆる右脳的な、というやつを言いたいわけで。 とどのつまりスト…

『バーン・アフター・リーディング』感想。

コーエン兄弟監督作品 『バーン・アフター・リーディング』DVDにて 全身整形さえすれば人生はきっと好転する。 そう信じてやまない天然おバカなオバサンが、ある日ひょんなことからCIAの秘密データを拾ってしまった。 これはカネになると。 強請れると。 つ…

『ドリームガールズ』感想。

ネタバレで。 シュープリームスが大スターとなっていくその過程の内幕を描いたミュージカル。 固有名詞はすべて置き換えられていて、いくつかの人物は実在をモデルに作り上げられているので、決して実録物というわけではない。 んが、 かつて元メンバーによ…

ショーン・ペンが主演した『I am Sam』という映画。 そのデキはといえば、 実のところあたくし的には赤点なわけで。 その評価は今もって変らぬのだが。 うん。 白状しておこうか。 そう断言しつつもあたしゃあの映画で泣いているのだな。 それも大泣きしてい…

……ってことで、自由とは。 なんて、大きく出ちまいましたが。 はみちんどころか、丸出しですが。 さらに大きくかましやしょう。 それすなわち、 自分の命よりも大切なものを知ることにある、のだ。 なりふりかまわぬ生存至上主義の向こう側ということ。 なん…

『冷たい熱帯魚』感想。

園子温監督作『冷たい熱帯魚』DVDにて 以下、ネタバレでいく。 どうにもこうにも、不細工な映画である。 お話の構成やら、 事物の対比、 演技設計、音楽の統合化といったありとあらゆる点でバランスへの配慮が感じられない。 (※追記。むろん吹越は安定してい…

コーマック・マッカーシーの『すべての美しい馬』を読みはじめた。 その、異様に長く、 かつ冗長とも思える独特のセンテンスをこなしてゆくうちに、 彼が好んで描く、国境の乾いた空気が恋しくなって、 つい、 映画『ノーカントリー』を観なおす。 久方ぶり…

NARUTO 巻ノ五十七。 以下、 NARUTOとHUNTER×HUNTERのネタバレ含む。 もう愛想を尽かしてはいるんですけどね。 職場唯一の共通の話題がコレなので、 腐れ縁的に購入した次第。 冷めちまった最大の理由は、あれだ。 木の葉崩し。 大量殺戮を描いたまではいい…

ここのところアニメ『エウレカセブン』を観ている闇生なのである。 レンタルでね。 かつて溺愛していた某サイトさまが激賞されていたので、気にはなっていたのだが、生来の天邪鬼がわざわいして今に至るという次第なのであーる。 のけものなんてもんは、いつ…

『プレステージ』ネタバレ感想。

クリストファー・ノーラン監督作。 DVDにて。 以下、 ネタバレでいく。 人体の瞬間移動というマジックがある。 棺おけのような箱に入っていたはずの人が忽然として消え、 瞬時にほかの場所から現れるという。 乱暴に言ってしまえば、 その大ネタに命を懸けた…

映画版『ザ・ロード』感想。

コーマック・マッカーシー原作、ジョン・ヒルコート監督作『ザ・ロード』DVDにて。 ネタバレでいく。 かつて原作本の感想はここで書いた。 ↓ http://d.hatena.ne.jp/Yamio/20080728 だもんで、 どうしても比較してしまうのだが、 だからといって小説に忠実な…

『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』感想。

大森立嗣監督・脚本作『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』DVDにて ハツリという仕事がある。 たとえば身近では壁の修復工事などでも使われる言葉で、風化してひび割れたり浮き上がってしまった個所を一旦ハツッテから、補修すると。 叩いてそこを取り除くた…