昼飯休憩に立ち寄ったブックオフで、めっけもん。
まさか『摩天楼を夢みて』が中古で、しかも千円足らずで陳列されてるなんて。
もうね、 思わず「おおお」と、声を洩らしてしまいました。
元は舞台劇で、
デヴィッド・マメットのピュリッツァー賞受賞作なのだそうだ。
映画化にあたって本作の脚本も彼が書いている。
とある大手不動産会社のいち地方支社。
かつてはトップセールスをほこっていたが今ではオチ目というレビーンが主人公である。
現在は年下のローマが支社の稼ぎ頭。
あるとき本社から、業績三位以下のものは全員クビとの通達がある。
期限は今夜中。
トップを飾ったものには優良顧客名簿が授与されるという。
が、それがなければ契約にこぎつけられないという矛盾が立ちはだかる。
手許にあるのは、何度も契約を断られた、いわばお古の情報二件だけ。
さて、どうするレビーン。
果たして、若かりし頃のツキを、一夜にして取り戻せるか。
とまあ、そんな流れだ。
ジャケットを見ると、キャスト欄の筆頭にアル・パチーノの名が。
背表紙にも彼の顔。
けれど、それは商売的な事情からなのだな。たぶんね。
VHS時代のパッケージはさらに露骨にパチーノ押しでした。
実際は、レビーン役のジャック・レモンが主人公で、本作は彼の演技に酔いしれる一本といっていい。
パチーノは脇役で、
しかも、俳優としての両者の関係が、そのまま役柄に投影できるところがおもしろいのだ。
つまり、人気も名声も若いパチーノが上になってしまったが、パチーノ自身は、名優ジャック・レモンを尊敬している。
という二重構造。
その他の脇役も実にすばらしい。
ケヴィン・スペイシー。
ジョナサン・プライス。
エド・ハリス。
アレック・ボールドウィン。
アラン・アーキン。
これら舞台出身の芸達者の間で繰り広げられる丁々発止のセリフの応酬。
酔うよ。
もしこれを日本でやるとしたら、どういう配役かね。
やっぱアイドル的な人を真ん中にすえなきゃ企画が立たないかね。
映像もいいが、
夜中にひとり、じっくりと大人の演技を味わっていただく、一本だ。
解雇まぎわの男のあがきぶりに、
わが身を重ねて見るひとも少なくないことでしょう。
俺も重ねたし。
☾☀闇生☆☽
音楽もウェイン・ショーターをフューチャーしていたりして、お洒落です。
けど、
邦題なんとかなんねーのかな。