壁の言の葉

unlucky hero your key

映画。

佐々木芽生監督作『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』DVDにて 現代アートの収集に生涯をささげ、決してそれを売らなかったボーゲル夫妻の晩年を記録したドキュメント。 ユニークなのは、その収集のルールである。 買った作品は決して売らない。 地…

サイモン・ブルック監督作『ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古』渋谷イメージフォーラムにて 英国の演出家ピーター・ブルックによるワーク・ショップを追ったドキュメンタリー。 想像上の一本のロープを綱渡りする、というシンプルな演技を基点に、…

『チェ』二作、ネタバレ感想。

スティーヴン・ソダーバーグ監督作『チェ 28歳の革命』、『チェ 39歳 別れの手紙』DVDにて 前者、カストロとの出逢いからキューバ革命達成までの苦闘もいい。 なんせカタルシスがある。 んが、 その感触の無い後者のボリビアでのゲリラ戦記が、やはり重く胸…

『コララインとボタンの魔女』感想。

ヘンリー・セリック監督作『コララインとボタンの魔女』DVD ネタバレ感想です。 退屈な現実から非現実へと逃避した子供が、痛い目にあって現実へ逃げ帰ってくるという王道ファンタジー。 物語の基点となる現実世界とは現代であり、子供からみた大人のつまら…

『ダークナイト・ライジング』ネタバレ感想。

クリストファー・ノーラン監督作『ダークナイト・ライジング』DVDにて 人気も歴史もある外国の漫画キャラクターの話であり、数ある続編のひとつでもあるので、そう軽々しく感想も言えない。 というのもご覧になってわかるように、一見して貧富の差を逆転させ…

『映画 立川談志 ディレクターズカット』感想。

★『映画 立川談志 ディレクターズカット』DVDにて 立川談志の追求した落語論を、その生前の高座とインタビューから端的に紹介しようという試み。 “業の肯定”は『黄金餅』から。 “イリュージョン”は『やかん』から。 そして“江戸の風”を『芝浜』から。 後者二…

『アウトレイジ ビヨンド』感想。

北野武監督・脚本『アウトレイジ ビヨンド』DVDにて なんか普通の監督になってしまった感がある。 『普通の監督』というのも随分な物言いではあるのだが、とどのつまり「おっ」と思うところが無い。 むろん普通にエンタメを撮ろうとしたのはわかる。 わかる…

『アカデミー賞ショートフィルムプログラム2014』ブリリア・ショートショート・シアター(横浜みなとみらい)にて。 『最後の農場』2003年 アイスランド 17分 『ミラクル・フィッシュ』2009年 オーストラリア 18分 『死の影』2012年 ベルギー 20分 以上全三…

クリスマスに忘年会を企画する勤務先ってどーよ。 どうせあいつもあいつもヒマだろうからさ、って。 そのレッテル貼りはいいとして、 どんだけ家に帰りたくないんだっつう。 どんなに肩身の狭い家族環境なんだっつう。 おっさんがクリスマスに居酒屋で群れ集…

『アリゾナドリーム』ネタバレ感想。

エミール・クストリッツァ監督作『アリゾナドリーム』DVDにて ニューヨークで漁師として働く若者が、故郷アリゾナで過ごす奇妙で激しい数日間を描く。 両親は彼が幼いころに事故で他界しており、 その事故を自身の過失であると引きずりつづける叔父に育てら…

『黒猫白猫』感想。

エミール・クストリッツァの『黒猫白猫』を観る。 かつて彼の『アンダーグランド』に打ちのめされて以来ずっと意識はしていたものの、そう思うあまりに生半可な気持ちで対峙してはいけないと、機を逃し続けていた。 こう書くとやたら重くてお高くとまった映…

松本人志の映画から、映画を感じないという人はいるでしょう。 その善し悪しは別として。 それを新しさと呼ぶべきかどうかも、置いといて。 新しさのことごとくが必ずしも良いかどうかも、すっ飛ばして。 ただその理由は、明確です。 彼が映画に帰依していな…

宮崎駿監督「引退」へ=スタジオジブリ社長が発表(時事通信) 引退宣言は毎度のことだから慣れっこだ。 んが、 今回ばかりは本当かとも思う。 これまでのは「毎回これが最後だと」いう自己暗示もかねてのことだった。 けど、今回は正式発表でしょ。 とはい…

『太陽に灼かれて』感想。

ニキータ・ミハルコフ監督作品『太陽に灼かれて』DVDにて 舞台はスターリン体制下のソ連。 母なる大地と自然、見はるかす広大な農地のまっただなかにその一家は優雅に暮らしている。 ロシア革命の英雄で、民にコトフ同志と敬慕される軍人とその一族。 妻は若…

五時台のJ-Wave。 今『あの夏、いちばん静かな海。』のテーマが流れている。 ずるい。 映画監督としての武にとっても青春の一作だと思う。 拙くて、青くて、そして不格好だが、強い。 追伸。 くそったれ。 ☾☀闇生☆☽

日がな一日、映画『12モンキーズ』のテーマが頭の中で鳴っていた。 http://youtu.be/EKKo1Q2h9w4 そういやピアソラもしばらく聴いていない。 ブラッド・ピットが狂気を解放していくときにあのテーマが流れるシーンはやっぱ、狂気の爽快、もしくは痛快を感じ…

三国連太郎といえば『マルサの女2』なんだよなあ、やっぱり。 映画通ならば、もっとシリアスな名作をあげるのでしょう。 んが、 まっさきに浮かぶのがなぜかこれなんだわ。 作品自体、前作よりもさらにデフォルメがエスカレートしてトゥーマッチなところが…

『somewhere』ネタバレ感想。

ソフィア・コッポラ監督作『SOMEWHERE』DVDにて スティーヴン・ドーフ主演。 ハリウッド・スターの一見派手で賑やかな私生活。 その喧騒の渦中の、さながら台風の目のように凪いだおだやかな孤独を描く。 家庭を顧みない夫との生活に疲れて、妻が出ていく。 …

『ベルヴィル・ランデブー』感想。

シルヴァン・ショメ監督作『ベルヴィル・ランデブー』Gyao無料配信にて。 DISCASで予約していたのだが、Gyaoで見つけて思わずクリック。 Gyao配信『ベルヴィル・ランデブー』 以下は、そのネタバレで。 いやあ執念だわ。 驚嘆である。 同監督の『イリュージ…

映画『大脱走』をDVDで。 この手のクラシックというやつは観たつもりになっているばかりで、実のところあまり知らなかったりするもので。 この作品も子供のころにテレビで観ただけにすぎず。 いくつかの名シーンとテーマ曲が記憶に残っているだけだった。 シ…

『シングルマン』ネタバレ感想。

トム・フォード監督作『シングルマン』DVDにて。 以下、ネタバレで。 コリン・ファース主演。 監督はデザイナーとして有名な人だという。 あたしゃそういうのにまったくもって疎いので、知らない。 おそらくは、この溢れんばかりの神経質な映像。小物や衣装…

7勤を二週続けていたせいか、 もしくは今日の雪のせいもあるのか、 休みにされてしまったよ。ケービ。 だもんで、 というのもなんだが、 GYAOの無料動画でなんとはなしに『ホーリーマン』を眺める。 言っとくが、別に坊主つながりで観たわけではない。 異世…

『幸せはシャンソニア劇場から』感想。

クリストフ・バラティエ監督作品『幸せはシャンソニア劇場から』DVDにて 劇場の灯を消すな。 とは3.11直後の野田秀樹の言葉だった。 エンターテイメント界に自粛ムードの強まるなか上演している芝居に地震のシーンがあり、それが震災を連想させると公演の継…

『ロスト・イン・トランスレーション』感想。

ソフィア・コッポラ脚本・監督『ロスト・イン・トランスレーション』DVDにて 映画でこんなに笑ったのは久しぶりだと思う。 洋酒のCM撮影のために来日したハリウッド俳優と、 旦那の仕事に合わせて日本で滞在するアメリカ人の主婦。 言葉も文化もことなる国で…

あれ? 日記の日付け間違えてた。 ひとつまえの記事も、今日書いたやつです。 雨・中で休日になってしまったので、床屋に。 その帰り道、 井上雄彦の『リアル』の新刊を、コンビニで購入。 涙す。 でもぎりぎりだな。 ときに、使い古されてお安くなってしま…

伊丹十三の『タンポポ』を観なおす。 有名なオムライスのシーンはノッポさんのマイムあってこそであると再確認。 あの圧倒的な豪華キャストのなかではつい埋もれてしまいがちだが、適材適所とはこういうことをいうのだろう。もともとノッポさんありきで書か…

『イリュージョニスト』感想。

ジャック・タチ脚本、シルヴァン・ショメ監督作『イリュージョニスト』DVDにて ペーソスは、あるよ。確かに。 けれど悲劇とまでいうほどではないし、 泣いたの感動したのといった大作的にあつかうべきでもない。 売り、としてはそんなやっつけをしたいのだろ…

『倫敦から来た男』感想。

ジョルジュ・シムノン原作、タル・ベーラ監督作『倫敦から来た男』DVDにて おそらくはこの監督、事件やドラマが撮りたいのではない。 たそがれていく人々の、慎ましき日々の営みを。 いや。 慎ましく営みながら、たそがれていくほかのない人間を、撮ろうとし…

『ソーシャル・ネットワーク』感想。

デヴィッド・フィンチャー監督作『ソーシャル・ネットワーク』DVDにて フェイスブックの誕生と発展にまつわる悲喜交々を、創設者のマーク・ザッカーバーグを中心にすえて綴っている。 ただしエンドロールには「随所に創作を加えたドラマです」との但し書きが…

続編の完成が待たれる北野武の『アウトレイジ』。 その一作目の感想を、公開当時に水道橋博士と町山智浩がラジオで激論していたのを知る。 この度、Youtubeにアップされた音源を拝聴し、お二方の見識にさすがと唸った次第でござった。 曰く、 武の作風は芥川…