信州に嫁いでいる姉から毎年りんごがとどく。
それもひと箱。
ひとりもんのあたしにどんっ、とひと箱だ。
今年も有難くいただいたのではあるが、さて問題はお返しなのであーる。
毎年悩むのであーる。
先にも書いたが、あたしゃそういうのまったくセンスがないのであーる。
えへんえへん かしこ。
たしか談志がどこかに書いていた。
困ったときにはビールを贈っとけと。
ビールならたしかに日持ちもする。
くわえて「とりあえず生っ」が飲食店での常套句にもなっているくらいだから駄目な人は少ないはず。
ましてや姉は酒も飲めるのだし。
量はそう多くはたしなまないのだが。
こだわりや銘柄を云々しているのは聞いたこともないのだが。
といって酒以外であたしの住む地域での名産というと、なかなか手ごろなものが浮かばないのである。
果物ならば信州の方が圧倒的に強い。
そりゃもう、りんごも梨も葡萄もブランドが確立されているからな。
菓子類も選択肢に入れてはみた。
むろん日持ちを考慮して焼き菓子だ。
んが、ふだん菓子をくちにしない身としてはいまひとつこれという決め手がわからないのであーる。
なにがスイーツ男子だ。けっ、
と拗ねておく。
これまではたびたび地酒を選んできた。
検索で地元の蔵元をいくつか探り、普段は手の出ないクラスの金額のを無理して選んだものだった。
よってあたしゃそれらがどんな味なのか実は知らない。
知りたくても手が届かない。
仮に日本酒をえらんで、それが姉の期待に添えなくともその旦那、つまり義理の兄は愉しんでくれるに違いないとふんだのである。
義兄は酒飲みだ。
ウイスキー、日本酒、ワイン、ビール、となんでもござれ。
しかも毎日やる。
同じ日本酒でも食事中と食後とで銘柄を変えて愉しむ。
ならば姉の顔も少しは立つかもしれないとそう思い、これまでいくつかの蔵元の純米吟醸を贈呈してきた次第。
けれどだな、空しいことにだな、感想を得られたことが今まで一度もないのよねー。
その点、自作小説と同じなのよねー。
あたしの手にかかればすべて無反応になるのよねー。
これはある意味特殊な念能力とはいえまいか。
いえまいかっ。
ともあれ、口に合わぬのか。
どうなのか。
辛口がいいとか。甘口が好きだとか。
そういうのがさっぱり伝わってこない。
しーーーーーーん、としている。
そのせいで義兄の好みのデータが蓄積されないのである。
贈るたびに感想が得られたならば脳内データはその都度修正され、傾向と対策を練りなおし、次なる一手の参考とするであろう。
義兄にとってもそれは悪かろうはずもない。
それなのに無反応。……むう。
次の手が打てぬではないか。
で、話はビールに戻る。
東京武蔵野産のビールが出ている。
クラフトビールというのか。
これを思い出した。
地元というよりは勤務先なのだが、まあいいだろう。生活圏内だもんね。
アマゾンで検索すると、なんどこれまでに二度も箱で贈っていることが判明す。
まぢかよ
つまり過去に黙殺されたということだ。
うううううううむ。
いや、これはもうあれだ。
知らん知らん知らーんと。
気に入ろうが気に入らなかろうが、知ったこっちゃねえのである。
善意などあげっぱなしが丁度いいのだ。
ざまみろ。
あげっぱなしの刑に処す。
気に入られなかったとしても来客があったときには出せるだろう。
たとえば話のタネとして。
こんなんありますよと。
そう考えて、結局これにしたよ。
おつかれっ。
☾☀闇生☆☽