ニヒルにて。

 空模様がすっきりしない。
 よって今週の甲州道中歩きはお休み。
 なんつったって次は峠越えである。
 こんなド素人が雨のなか、散歩の延長のような気分でやらかしていいわけがないではないか。
 といって、せっかくの休日を無為に過ごすのももったいないぞと。
 とりあえず新宿に出た。
 電車一本で街というとあたしの場合、新宿になってしまう。
 先日職場で勃発した『別れ』について考えながら、ぶらりぶらり。
 おなじ底辺で同じ現場でもある高齢者の先輩が、酒でしくじって退職とあいなった。
 

 いかんいかんいかん。


 意識が濁って、澱んで、沈んでいく。
 まずいことにそのことに知らずにゆっくりと馴らされていくようで、なんだろ。
 なんかパワーがほしい。
 ほしいのだ。
 

 西荻へ。
 発信するひとたちの生々しさを、くれ。
 というわけで久しぶりにニヒル牛にお邪魔した次第。


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ニヒル牛。本日の収穫。


 じいっくりとひとつずつ『箱』を見学す。
 それだけで、目が愉しんでいる。
 わけわからんオブジェの、わけわからなさを面白がる。
 で、購入は本二冊。


 平田真紀『浴室短歌 2』。
 これの1は購入済み。
 浴室の壁にカラー石鹸で書きなぐった歌集で。
 どうだこの、よなよな女がすっぱだかで、己の深層からいびつな言葉たちをつかみ取りにしては、予定調和くそくらえとばかりに壁に殴りつけているさまは。
 いや、べつにご本人が登場しているわけでも、女の裸が映像としてあるわけでもないのだが。
 あるんだ。どーんとした裸の女が。
 一見、脈絡なく飛躍した言葉のコラージュから、不意にひとつの情景が立ち現れる。
 そんな歌に出くわすときがうれしい。


 わたなべともこ『チェンマイ てんてこまい』。
 こちらは旅本。
 しかもニヒル牛ではすっかり旅本作家という印象が強い。
 今後、甲州道中をつづけるにあたって、別にそれを面白おかしく本にしてみせようとは思わないし、その技術も備えていないのだが、旅のおもしろがり方をおそわろうと考えた。
 で、この本だ。
 この作家にかぎらず、ニヒル牛の作家たちは楽しむことのスペシャリストばかし。
 それが見る人を楽しませているのだろうけれど。
 あたしの場合、まずは自分が楽しまねばならんのだわな。
 これから読み始めます。


 でお会計の際に、店主から声をかけられた。
 特設展で本を特集したいのだが、何かアイデアはないかとのこと。
 『旅本』は大成功して恒例となった名物企画。
 しかし、その人気にあぐらをかいて鼻毛を伸ばす気など毛頭ないようなのである。ここの店主は。
 あくまで攻めの姿勢。
 企画ハラスメント。
 そんな言葉はないが、強いよね。
 煩悩はこういう風に前方向に消費したいものである。


 唐突な申し出にうろたえながら店をあとにした闇生だが、
 駅への道すがら思いついた。
 図鑑が見たい。
 うん。図鑑。
 架空、実在のこだわりなく、あらゆるものの図鑑。


 
 架空の動物図鑑。
 架空の昆虫図鑑。
 架空の缶ジュース図鑑。
 架空の淫具図鑑。
 架空の兵器図鑑。
 おっさん図鑑。 
 火星人図鑑。
 負け犬図鑑。
 ゾンビ映画のエキストラ(端役ゾンビたち)図鑑。
 などなど。
 

 絵で愉しめて。
 解説文で楽しめて。
 二度おいしい。


 などと勝手なことをほざいておりますが、図鑑の体裁にするには少なくとも10や20のアイテムは必要だろうから、きっと手間がかかりますなあ。
 それに案として『小人図鑑』に影響されてもいます。
 んが、
 あそこの作家たちの手にかかれば、一筋縄にはいきますまい。
 観たいです。
 いろんな図鑑を。




 追記。
 『チェンマイてんてこマイ』読了~!
 自称「社畜」ふたりによる怒涛のタイ紀行だ!
 ぎうううっと詰まってます。
 表紙のこの柄は、あそういうことかと腑に落ちる。
 
 




 ☾☀闇生★☽