毎年、渋谷ハロウィンの真っただ中で敢行される現場がある。
今年もなぜかそこにあたしがに配置された。
なんの巡りあわせだろう。ハロウィンと年越しカウントダウンは毎年その現場にいる気がする。
監督が気難しく、隊員を選り好みする。
場合によっては個人を出禁にする。
どうやらあたしはそのお眼鏡には適っているらしい。
毎度この現場は喧騒のおさまりを待って開始するので、時間が遅い。
この日もゆとりを持ってアパートを出る。
今年は渋谷駅周辺は交通規制がしかれていた。
一般車がハチ公前に入り込まぬようにしているせいで大渋滞。
クロスカブ通勤のあたしはそのせいであわや遅刻しそうになったのだ。
ましてやすり抜けをしない主義である。
すり抜けをダサいと思っている。
ダサさをとるか、渋滞をとるかで大いに逡巡す。
どうにか渋谷ストリーム一階のバイク駐輪場にたどりつく。
現場まで歩いたが歩行者までが流れを規制されて一方通行にされている箇所があった。
ただこの交通規制の効果は大で、例年大音量で音楽を鳴らしていた路駐車両が今回は見当たらない。
例年通り終電の時間まで先方さんの通勤車のなかで待機す。
弊社への賞賛のお言葉をこの待機中にいただいた。
ありがたし。
料金の兼ね合いで普段は安い会社に発注しているのだそうで、その仕事ぶりも人品も目を覆いたくなるようなレベルなのだという。
社会人としてアレはどうなんだ、とまでおっしゃっていた。
大混雑するハロウィンと大晦日だけはさすがに彼らに任せられず弊社を使うのだと。
彼らはたこ部屋のような寮を会社からあてがわれて生活しているのだそうで、
そしてその生活で満足しているらしい。
哀しいかな昭和の頃からそういう業界だ。
しかしそれでいてみな年齢が若いという。
もったいない。
赤いカラーコーンの扮装をした三人組が通り過ぎる。
全身タイツの一団。
路地裏は立ちションスポットとして大盛況。
E.T.の仮装に外国人たちがスマホを向けていた。
平日ということもあってか終電後にはパタリと人が減った。
警察車両も一時半には大方が撤退していった。
当の現場といえば短期集中だ。
頃合いを見計らってせえのっ、の気合で歩道を規制。
酔っ払いにからまれることもなくさくさくっと終了。
年々外国人が増えていく印象。
それも観光客っぽい。
渋谷のパーティ状態は海外にまで情報が飛び交っているのだろう。
あれが面白いと感じるのも若いうちだけだ。
街はあの騒ぎを歓迎していないのだから。
その証拠に飲食店は通常通りか、あるいは早めに閉店してしまう。
店頭に売り場を特設しているところも見かけない。
仮設トイレも用意されなければ夜店も許可されていないようだ。
何かしらの露店で稼ごうとするのが現れてもおかしくないと思うのだが、とんと見かけない。
仮装とコスプレの近似性を踏まえればアキバに群れ集まってもよさそうなものだけれど、どうしてそういう発展を見せないのだろう。
ハロウィンといえば仮装とお菓子だろう。
けれど仮装ばかりが日本流にアレンジされていき、お菓子のやりとりはあまり見受けない。
お菓子メーカーが何かしらブームを仕掛けてきそうだけれど、当たったものは耳にしない。
ハロウィンのデザインをした商品がただ店頭に並んでいるだけである。
でかい会場を設けて仮装者にお菓子を配るとか。
仮装コンテストを催すとか。
やってるのかもそれないけれど、どうなんだろね。
渋谷は刺激やトラブルを期待した見物人たちであふれ返り、
見物人たちが見物人たちを見物している態である。
☾☀闇生☆☽