壁の言の葉

unlucky hero your key

 あたしが職長をつとめる現場がいよいよ終了を目前にひかえることとなって、日々につかう人数を減らされている。
 それは毎度のことなのだが。
 先日は三日工程で組まれていた作業をその場の思い付きでやっちゃえやっちゃえとなり、一日で終わらせるアホっぷり。
 所長はドヤ顔だ。
 んが、段取りはめちゃくちゃにされるし、打ち合わせもテキトーで、必然的に規制変えも雑になるから危険この上ない。
 朝礼で発表されたその日のノルマを超えた時点で、チームのテンションは下がりまくりますわな。
 結果的に予算を節約したということなのだろうけれど、その落ちた気分が災いして事故でも起こしていたら元も子もないだろうに。
 どう思います?「今日はここまで」と目標を設定されて走り出したにもかかわらず「やっぱここまで」「あ。やっぱここまで」とずるずる延長されて三倍にされるのって。
 なにより三日食えるはずが一日しか食えないという事態なのだよ。
 まあ、
 そういうことの連続したうんち現場でした。
 名残惜しさの欠片もない。
 仮にこのうんち元請の次の現場に指名がかかっても、断る所存。
 んで、
 終了にむけて我がチームも一人減り、二人減りとなっていくわけです。
   

 現場の切れ目が縁(¥)の切れ目


 そういうことなのだ。
 あれだけ小まめにやりとりしていた仲間とのメールやらも、すとんと途絶えるのね。
 現場をまかされているときは、誰彼となく連絡がくる。
 露骨に「入れて下さい」とアピールしてくれる仲間までいる。
 しかし、現場が終わればあたしなんかに用はないわけで。
 将来、引退を余儀なくされるときがくれば、これが最期までつづくのだな。




 数日、月が美しい。
 だなんていう些細でかけがえのない平凡を確かめ合う仲も、途絶えていつか終わりが来る。



ドビュッシー「月の光」 (ミシェル・ベロフ)





 未明のコインランドリーで洗濯をしながら読書。
  




 闇生