現場から逃れて夜の街をひとり、歩く。
クレームとアクシデントの多い夜だった、らしい。
あたしのポジションでは何ごともなく極めて平和だったけれど。
無線も届かぬ場所で仲間たちはクレームと監督の激怒を浴びていたらしい。
それは終了後に知った。
笑顔で冗談を交わすような良好な関係に思われたのだが、チンピラ口調で罵倒されるような事態だ。
担当ポジションが離れているために経緯を知ることができなかったあたしらではあったが、現場終了後にみんなと並んで頭をさげた。
事情も分からず、なぜ激怒しているのかも知らされず、立場上みんなと頭を下げる。
心のない形だけの謝罪をする者とはこういう気持ちなのだな、と。
しかし、仕方がない。
事情はむろんのこと当事者の言い分も聞きたかった。
けれど、この現場の職長はあたしではない。
出しゃばらない。
出しゃばってはいけない。
後輩たちが居合わせるなかチンピラのような恫喝をされて、彼もベテランだ。言い返したかっただろう。
けれど、堪えたよね。
個人的には、気分良く終えたつもりの一夜。
たくさんの「ありがとう」「ご苦労さま」を浴びた。
まさかこんな後味の悪い最後が待っていようとは。
みんなもそう思ったに違いない。
苦い酒を渋い顔でなめているのに違いない。
当事者は、つらいだろう。
クレームをした人も良い気分ではないだろう。
監督のストレスも収まらないだろう。
明けて役所に報告しなくてはならないのだし。
けれど、ついチンピラ風情に堕してしまったことについては、どうだろう。
その点についても苦々しく思い出しているだろうか。
おつかれ。
☾★闇生☀☽