現場から降りた。
それは後輩が職長をつとめる現場であり、あたしゃそのサポート役ではあったのだが、降りた。
まず職長が我慢の限界となって、降りた。
引き受けた仕事を途中で投げ出すなんてことは不本意なのではあるが、それを受けてあたしも降りたのだ。
問題の現場といえば、これはもう現場と呼ぶのも憚れるほどの有様であった。
順番から言えばあたしが職長を引き継ぐべきなのだろう。
けれど、もう疲れたよ。
降りることにしたのである。
前々から代理人がサボることが気に障っていた。
ぷいといなくなって派遣に任せたままにするのである。
書類整理をする、などと云ってぷいと現場近くにある事務所へと消える。
終了まで戻ってこない。
段取りも悪い。
終バスの通過をまって通行止めをするのが毎日の流れなのだけれど、その通過を待たずにバス停に通勤車を駐車してそこに道具類の仮置きをするのだ。
よりによって代理人がである。
まもなく終バスが到着する。
顰蹙を買ってあわてて車をまわす。
これを毎日繰り返している。
あほだ。
20tの回送車と大型ダンプの出入りする路地に、わざわざ使用しない通勤車を停める。これも代理人。
邪魔だっつのっ。
清掃に使う高圧洗浄をのせた軽トラでサボりに出てしまうことが多々あった。
そのまま終了まで戻ってこない。
よって施工後の路上の清掃が遅れる。
つまり通行止め解除も遅れる。
呆れた作業員たちは待ちきれずに次々と帰っていく。
こうなると元請は下請けになめられる。
代理人の不手際はため口で罵られるようになる。
ましてやそんな代理人だ。発注の不手際、段取りの間違い、設計図の読み間違いが頻発する。
職長が公然とサボりはじめる。
なにかと手を止めてはスマホをいじりだす。
そして本復旧をまえにして代理人が交代した。
新しい代理人は名ばかりで現場にほとんど顔を出さない。
現場につけられた元請社員はド新人。
バーナーの使い方さえ知らなかった。
にっちもさっちもいかない。
本来なら本職の舗装業者にまかせるところが、下請けの配管施行班が仕事を欲しがった。
これに押し切られて施行班で本舗装することとなった。
段取りも何も思い付き。
がちゃがちゃだ。
新人監督は仕事を覚えるので精いっぱいで、戦力にならず。
統率力も無く。
総監督不在という事態に。
仕上がりもひどい。
こんなにひどい仕上がりの本復旧は、はじめて見たよ。
出入りするダンプドライバーにしろ、外注で頼んだフィニッシャーのオペにしろ、指示が定まらないので苛立って困惑していたな。
となると元請をなめるから、それぞれがやりたいようにやりだす。
誰も歩行者動線や規制、第三者への迷惑まで配慮しない。
客観視しない。
全体の効率を考えない。
やりたい放題。
とまあ、数か月我慢し続けたのだがこれが限界だ。
舗装はあと3夜。
そのあとライン引きで4日ほど。
総じてわずか1週間の辛抱なのだろうけれど、潮時だと見限った。
なにかというと作業班のリーダーは「ガードマン立たせとけばいいじゃん」「片交させればいいじゃん」である。
ガードマンは魔法の杖ではない。
動線をふさいでダンプからユンボをおろし、
狭い歩道に道具を置き、
果てはタワーライトで塞ぎ、
苦情があるとガードマンまかせ。
あ
ほ
く
さ。
これまでなんでもかんでも対応してきた。
けれど、それが当たり前となって連中は我々を顎で使うようになってきた。
ご奉仕も大概にしないとな。
本番までやっちゃうヘルス嬢になってはあかんのだよ。
☾★闇生☀☽