壁の言の葉

unlucky hero your key

花輪和一『水精』

 日本の中世に跋扈する精霊たちを描いた怪奇短編集。




 例によって怨念、執念、妄念といった人のあさましさにまつわる念が重層的に蠢いており。
 それは作者の一筆一筆に至って、もうこれでもかってくらい綿密にねり込められていて。
 その念の織り成すぶ厚い雲間からはときにひと筋の陽の光が差す。
 そこにささやかな希望を、願う。祈る。感謝する。
 これぞ花輪ワールドですな。
 諸星大二郎が紡ぎ出す考古学的仮説ファンタジーとの違いは、そこ。


 既存の西欧風ファンタジーに毒されることなく陶冶されてきたイマジネーション。
 圧倒されます。
 独特の擬態語、擬音語の耳触りもまた、あなたを虜にすることでしょう。






 ☾★闇生☀☽