日本橋。
予報にない雨が、思いのほか本降りとなった深夜。
休む場所もなく、休憩中を歩きつづける。
開発重点地域で、あちこちで工事をしている。
別の現場のゲート番の老警備員が酔っ払いにからまれていた。
道をきかれて、うまく答えられなかったらしい。
とおりかかったあたしに彼は助けを求めようとしたが、酔っ払いはそれを許さない。
「逃げるなよ」
スマホを取り出し、警備員の顔をパシャっと撮って、クレーム入れると恫喝する。
たちが悪い。
あたしはといえば、別現場についている別会社の警備員で、制服である。
この件にかかわると、それはそれで問題がややこしくなってしまう。
同情しつつも距離をおいた。
それから酔っ払いは千鳥足で歩道をゆき、別の規制現場による歩行者迂回案内の警備員にもからんだ。
ろれつがまわっていない。
交差点を直進したいらしいのだが工事のため通行止めとなっており、歩行者は二段階に横断しなければいけない。
酔っ払いは警備員をおしのけ、規制帯に沿って車道を歩きはじめた。
国道である。
そのまま横断しようとするが、赤信号。
別の警備員があわてて対応するも、酔っ払いは彼にもからんだ。
そしてスマホで顔をパシャっ。
同業者、おつかれ。
たとえこちらが悪くなくとも、そのクレームが本当になされたならば、事なかれ主義の元請けは彼らを出禁にする。
使い捨てだ。
この日あたしのついた現場もクレームのるつぼ。
隣接ビルのオーナーたちよるクレームに苛まれ、迂回を強いられるタクシーたちは現場のアラを探し、隣接の商業施設に告げ口をする。
これが痛い。
針の筵。
めんどくさいのでいっそ出禁にされたほうが楽だと思う。
☾☀闇生★☽