壁の言の葉

unlucky hero your key

Perspective.


 
 若いころ、日常のなかで同時にいくつ音を認識できるかを数えることで聴力のトレーニングをしていたとは坂本龍一の証言。
 たとえば電車に乗っているとき、列車の軋む音。
 対向列車とすれ違うときの窓のガタ。
 パンタグラフと送電線の摩擦。
 乗客の話声。
 ヘッドフォンの音漏れ……。
 普通の人でも十個くらいはすぐにみつけられるという。


 日常のなかで眼が疲れたとき、ふと遠くをみたりする。
 そんな感覚で音に耳をすます。
 音の奥行きがぐっと起ち現れる。
 世界を立体的に体感する。


 坂本龍一はそれをトレーニングと呼んだけれど、おそらく晩年まで習慣になっていたのではないか。
 


 さて、今日はどのルートを歩こうか。



 ☾☀闇生☆☽