壁の言の葉

unlucky hero your key

歌声。

 十日ぶりの夜勤は、連休明けとあって若干歩行者があったかな。
 けど、夜は早いね。


 クロスカブで走る帰路。
 後続車からなにか怒鳴られているような気配がする。
 最初は、並走する別の車から、車内で再生される音楽が漏れ聞こえてくるのかとも思った。
 しかし怒鳴り合いのようにも聞こえた。
 信号待ちでそれとなくミラーで後方をうかがう。
 どの車だろう。
 わからん。
 ふり返ってみる。
 後続の単車のライダーか、あるいはそのタンデムに乗ったひとかが叫んでいるような感じだ。
 信号がかわってスタートすると、その単車は他の車両の間をすりぬけて走り去っていった。
 タンデムに人はいない。
 あたしの傍を抜けるとき、そのライダーが歌っているのだと判明。
 女子ライダーがフルフェイスのメットのなかで、全力で歌っているのである。
 車内からは聞こえんだろうが、おなじバイクには丸聞こえだ。
 しかも、聞かせるほどうまくない。
 人知れずにする他人の『ストレス発散』に偶然居合わせてしまったかのような近寄りがたさがある。
 S字にすり抜けて、ぶっ飛ばしていく。


 あそうか。
 カラオケボックスも休業しているところばかりだし、
 大声で歌うの機会も減っているのか。
 たぶんそれでフルフェイスのメットのなかで、走行しながらなのね。
 



 冬ならシールドがくもっちゃうね。




 闇生