通行止めの予告ポジションとして、ラブホ前に立つ。
定点観測すると都会のラブホというのも面白い。
プロのおねーさんたちが頻繁に出入りしているのね。
そして、それを送迎する車。
大通りから客を紹介してくるキャッチさんたち。
それとラブホ街のまっただなかにある完全個室のネットカフェから出てくる若い女性たち。
始発待ちに使用しているのかと思いきや、電車のない時間帯に身なりを整えて出ていく。
おそらくはプロのおねーさんたちで。
注文を受けてすぐ出動できるようホテル近くのネカフェを待機場所にしている模様。
そしてシーツ類のクリーニングの業者。
ゴミ収集のパッカー車。
行き交う肥満したネズミたち。
この街は不潔だな。
汚いし。
で臭い。
いたるところにごみが散乱し、若い酔っぱらいが平気で立しょんをしている。
ここを縄張りとするキャッチさんや呼び込みですら平気でゴミを公道に捨てていることに気づいた。
街は、彼等の生活の拠点であるはず。
それは漁師にとっての海であろうし、
教師にとっての教室であり、
農家にとっての田畑であって、
役者にとっての舞台だろう。
にもかかわらず彼等はその街を愛さないし、街も愛されていない。
ここを利用する人々が、この街まるごと『 使い捨て 』と意識しているような……。
いや、
あるいは今では漁師も教師も農家も役者も、あやしいのかもしれない。
美しい国、ね。
ちょっと前まで、日本の街にはゴミが落ちていないだとか、秩序や道徳があるとか言われていたっけ。
しゃっちょこばった真面目さや、神経質な清潔さはむろん窮屈ではあるが、
おおらかなのと、したい放題のカオスとは違う。
『 支払い 』で停車したタクシーから何かを怒鳴りながら降りてきた若い男が、車中にのこした女の人を2発殴った。
ころすぞてめえ。
そのタクシーを後続のタクシーがクラクションでせかす。
美しい国、ニッポン。
闇生