壁の言の葉

unlucky hero your key

主観の車。


 応援でかけつけた水道工事の夜勤現場。
 通行止めに立つ。
 交差点を直進で通過しようとする車を左右の迂回路にご案内するポジション。
 道は碁盤の目状になっている。
 そのため、道なりに角を曲がって行けば施工部の反対側に出られる状況。


 苛立つのか、あえてスピードをあげ、通行止めに仁王立ちするあたしの直前で急減速して停車する車が何台かあった。
 そのまましばらく動かない。
 LEDの矢印板を左右に向けて表示しているのだが、理解できないのか、あるいは施工部近くの住人さんなのか。
 夜のため車内の様子はわからず。
 近寄って運転席をうかがう。
 と、ウインドーがおりて「あ゛?」と一発おしゃくれ遊ばされた次第。


 左右どちらからでも角、角を曲がって行けば反対側に出られる旨ご案内す。
 無言で車を後退させ、右の道へ入りかけて停止した。
 曲がり切れないのか。
 ふたたび車が下がる。
 脇道へ入りなおすのかと思いきや、反対の脇道へ急ハンドルで入って行った。


 最後までウインカーをつけないので、周囲を通過する歩行者からすれば車がどう動きたいのか、どちらによければよいのかついに理解できなかった。


 日常でも、こういう人いるね。
 表情に乏しく、意思表示をしない、目も合わせない。
 何をしたいのかわからない。そんなタイプがいる。
 ウインカーを出さない車は、要はあれだと思った。
 主観が強すぎるのだ。こういう人たちは。


 自分がどうしたいのか、いちいち周囲に伝える必要などないと考えている。
 自分の部屋のなかでのことならそれも勝手だが、状況によるよねえ。

 

 ☾☀闇生★☽