昼前に目覚める。
酔いは覚めており、夜勤までまだ時間があるのでウォーキングを敢行す。
土手のサイクリングコースを往復一時間半。
快晴。
まだまだ暑いが風が乾いて心地よかった。
桜の木陰をたどった。
気ままにジョギングしてみたり。
鉄橋の下にいつもいるホームレスが、この日も本を読んでいた。
高々と足を組んで、世間のことなどどこ吹く風だろう。
スマホがなくとも電気がなくとも本は読めるのだ。
彼はいったいどんな本を読んでいるのだろうか。
想像ではあるけれど、アウトプットの極端に少ない日常に違いない。
だれかと会話をしたりというささやかなアウトプットすら稀少な日々だと思う。
けれど読書はインプットだ。
入力され続ける膨大な言の葉たちは彼のなかで出口を断たれ、いったいどうしているのだろう。
どうなっていくのだろう。
市民プールは終了。
公園の駐車場にハイエース。
車内からフレンチホルンのような音がもれてくる。
どうせだだっぴろい河川敷だ。外で盛大に吹いたらよかろうにと思ったが、冷房のある環境を優先したのかもしれない。
この土地に引っ越してきたころ、ウォーキングの折り返し地点にしていた橋は今はない。
旧橋は片側一車線だった。
それをあるときから片側二車線で歩道のひろい橋に替えようと工事が始まった。
新橋が完成し、通行が可能になってもしばらくは旧橋は残されていた。
歩行者だけが旧橋を通ることができた。
いわば歩行者天国のようなもので。
となるとスケボーをする若者などもたむろするようになる。
その中央で、いつもドラムの練習をしていた女の子がいた。
ほっかむりに麦藁帽、夏でも長袖で厳重に日焼け対策をし、
タイコの中には毛布や座布団をつめてミュートして、
延々と8ビートを刻み続けていた。
ドンツンタンドンドンツンタンドンドンツンタンドンドンツンタンドンドン……。
やがて橋は撤去され、とうぜん女の子の姿も見なくなった。
対岸では今日も護岸工事。
この河はいつもどこかで工事をしている。
☾★闇生☀☽
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