壁の言の葉

unlucky hero your key

戦場。

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東京圏の病院は「感染患者でひっ迫」 新型ウイルス専用治療室の内部 - BBCニュース


 戦時中エース・パイロットで撃墜王と称賛された坂井三郎の著書『大空のサムライ』。
 そのなかで印象的だったのは、
 南方で負傷して後方送りとなったときに坂井がみた東京のあまりに平和な様子だ。
 よく映画などに描かれる本土への空襲や、それによる悲惨なイメージというのは実は敗戦間近のわずか数か月のことであって。
 敗色濃厚ななかで飢えと疫病と敵と戦っていた世界とはまったく隔絶したように、街はのどかだった。
 

 それは『戦場』と『日常』とのあいだに地理的な『距離』があったからなのだが、
 そして昔も今も『兵站』への致命的な軽視*1があるからなのだが、
 このたびの新型コロナによる現代の『戦場』は、あたしらの生活圏のなかにあるのだ。
 パチンコに呆ける人たちと、病院の戦場で戦い続ける人たちが同じ街に住んでいる。
 エリアが重複している。
 よその国の話ではない。
 このレッドゾーンにこもりっきりとなる医師たちの精神状態を想像しよう。
 イエローゾーンからそれを助ける仲間の胸中を想像しよう。
 彼らもまた例の営業続行のパチンコ店のニュースをみるだろう。
 そこに通う客たちの声もどこかで見るだろう。
 



 なかなかの事態です。
 有事です。
 
 
 


 闇生


 

*1:ただし、あれ以外にやりようがなかったという状況は理解しておりますです。けれどNARUTOなどの戦争娯楽にもみられるように、兵站もしくは補給線といういわば血流への意識が、エンターテイメントのレベルでさえ薄いと思う。「娯楽だからそこまで描かない」ではなく、「娯楽だからこそ描いて」常識にしてしまうべきではないかとまで思う。補給のことまで考えてこそ、戦いは活きるのでしょう。後方にもドラマはあるのだから。子供のころから補給を意識することが当たり前になれば、震災や今回のような事態でも、もっと知恵があつまるし、初動が早くなるのではないのでしょうか。漫画や娯楽から教わることは、決して馬鹿にならない。