中古50ccバイク受け取りの日。
10時半にケータイにて納車の連絡を受ける。
昼、ドンキで買っておいたメットをデイパックに入れてバイク屋さんへ。
整備、登録などの済んだTODAY F 白を受け取る。
対応に出てくれたスタッフはうら若きジョシで、この夏日のさなか深紅のツナギで整備に精を出しておられたのであろう。油と汗にまみれていた。
男勝りのバイク好きの匂いがむせ返るほどである。
この歳にして初めて買う車両が原付50ccの、しかも中古という身としては内心、おおいにたじろいだ次第。
わけもなくすんませんのココロでござった。
しかし書類関係の説明を丁寧にしてくれたのはいいものの、その文面をさす指の爪は伸ばされ、黒く汚れているではないか。
思わず爪ぐらい切れよ、と思ふ。
すまん。野暮天といってくれ。
あとになって気付いたのだ。そこはやはりジョシなのだな、と。
整備作業で割るおそれがあろうが伸ばせるものは伸ばしておきたいじゃあーりませんか。せめて爪くらいは。
さて、この日のために買ったといっても過言ではないメガネをかけ、メットを被り、買いたてのTODAYを颯爽と公道へ。
あれ? と思った。
20代の初めの頃、レンタルビデオ屋の遅番を担当していたあたしのアシは、もっぱら会社に借りた原付だった。
しかし、制限速度30キロという50ccならではのルールに、ついに馴染めなかった。
というか、50キロ平均で行き交う国道を、ひとりのろのろ30キロで走ってたら危ないよね。
怖い。
大きめのトレーラーやバスなんか、ぷしゅ、ぷしゅ、つって煽ってくるし。
抜くぞ、とばかりにクラクション鳴らされるし。
こっちゃむしろ危険回避としてフルスロットルをやらかしていたものである。
結果、さんざん捕まったわ。
遅刻しかけて、店につくまでに甲州街道で二度捕まったこともある。
「とまりなさい」
と背後からマイクパフォーマンスする白バイに逆切れして急ブレーキを見舞った結果、
「おまっ、っぶねー!! ばかあ」
とアナウンスされたこともある。
署まで出頭してみっちりお説教をいただきました。
慣れとはおそろしいもので、あれから時を経てケービ屋となり、通勤はもっぱら自転車である。
時速30キロの景色が止まっているようで耐えられなかったというのに、自転車で体感する風と景色に慣れきったいまのあたしには、30キロ。充分である。
おおお、こんだけスピード出れば満足っす、と。
現場までどんだけ時間と体力を節約できるというのか。
あくまで比較対象は自転車だ。
休日に都心に出たとしても、自らの汗くささなど気にせずにお店に入れるではないか。
しかも駐輪場に停められるしね。
ありがたし。
意味も無く、あっちゃこっちゃ乗り回したったわ。
あとは『一通』だね。
自転車のときは標識類をほとんど意識してなかったから。
☾☀闇生☆☽