水曜日は、西荻
 雨の中でケービ。
 寒かったあ。
 近くに何もなく、昼飯は公園であーる。
 猫たちはベンチの下で、
 あたしゃ便所の軒先で雨宿りと。
 せめてカップめんで体温を、
 つまりはカロリーを奪い返さんとしてずぶ濡れのままむさぼったわけでえ。
 雨音と、
 アンモニア臭と。
 カップヌードルカレー味。
 どうだ。
 なっかなかの風情だろう。  


 そういえば、
 入社したてのころ。
 麻布十番の現場で、やはりずぶ濡れで勤務したことがあったっけ。
 マンションの工事なのに、
 そこのエントランスさえ着替えに使わせてもらえないという、まことに悲しき事態でござって。
 土砂降りのなか、歩道の隅で着替えさせていただきましたね。あのときは。
 知らんで軒先を借りようとしたら、管理人が怒鳴りつけてきたもんね。
 すごいよね。
 雨の中で着替えるのを、ガラス越しに見張ってんだもん。おっさん。
 腕組みでさ。


 かと思うとその同じ現場で、
 スーツ姿の見知らぬおじさんが、
「雨のなか大変だね。ごくろうさん」
 と通りすがりに缶コーヒーをくれたのだ。
 んなことは、それきりだけれど。
 して、本当にささやかな出来事だけれど。
 人生という荒涼たる旅路の糧としては、
 少なくとも心象風景の、その点景として、
 貴重なアイテムなのです。
 たかが缶コーヒーが、つっかい棒になる。
 

 などとつらつら思い出しながらも、
 ぷるぷるぷるぷると体の震えがとまらん。
 こりゃ風邪ひくぞ。
 午後の一服休憩にもコンビニに駆け込んでカップめんを所望することとあいなった。
「すいません。お湯貸してください」
 返すあてもないくせに、なにゆえ借りるのか。お湯。
 んが、
 返されるあてもないのにあげちまうのが、愛だろう。
 ありがとう。コンビニの愛よ。
 愛たちよ。
 してその湯気よ。
 こんどは遊具の丸太小屋の中で、背中を丸めてむさぼった。 
 ニヒル牛2がすぐそこである。
 が、ずぶぬれのカッパ姿ではさすがに気まずいと。
 作品にもしものことがあったら、
 それこそひじょうに哀しい奴だろうと。
 戒めて、このエロ河童はあきらめました。
 日を改めやしょう。


 その日組んだ隊員さんは、よその支社のかただ。
 おじいちゃん。
 日に焼けて。
 もっさりと耳毛をたくわえて。
 その鼻の両穴のくろぐろとした闇のなかに、
 白くてでっかい鼻くそをこれ見よがしに晒しておられるのを、
 嗚呼、
 あたしゃついに言い出せずじまいだった。
 おじいちゃん、
 一緒にぷるぷる震えたね。
 鼻くそ丸出しだったね。
 けどそれはあなたのせいじゃない。
 それだけを心残りに、
 あたしゃ雨のなか、自転車で帰りました。






 雨雲のうえは青空って?
 嘘だね。
 こんな日は、
 海だってきっとびしょびしょだ。

 





 おつかれ。
 ご縁がありましたら、
 またよろしくです。





 ☾☀闇生☆☽