壁の言の葉

unlucky hero your key

無益。

 自分にも何か楽しいと思えるものや事があったはずだ、と思いを巡らすのだけれど。
 みつからない。
 何もしたくない。
 けれど、何か楽しい事で何かを紛らわせられたらと思う。
 

 やはり現場は隊員に丸投げされていた。


 誰が隊長?
 と現場代理人に問われて、顔を見合わせる我ら底辺たち。
 代理人スマホを取り出して「闇生さんという方と打ち合わせをしてくださいと営業さんからメールがきてます」と。
 開始15分前のことである。 
 三方向の通行止め。
 表層の舗装。
 営業にひとこと苦情をいれようと電話をするが、電源が切られている。
 メールは既読にならない。
 もういい。
 思い直し、メールをブロックする。
 アドレスから削除。


 作業区間内の住人さんがぞくぞくと帰宅してくる。
 そのたび作業状況を確認し、どちら側から入ってもらうか相談し、説明し、を繰り返し対応しつつダンプのバック誘導などもする。
 トイレは往復二十分の公園かコンビニ。
 やる気が失せる。
 他支社から狩りだされたやる気のない寄せ集め集団。
 無線すら持たない無能集団。
 同じ支社の何人かが辛うじて自発的に動いてはくれたものの、
 他支社にも先日組んだ人がいてこのかたも戦力になってはくれたものの、
 あとはカカシだ。
 何も気くばりできず。
 あわよくば何もしないで済むようにと素知らぬ顔で立っている。
 無線の応答も下手くそで、肝腎なことを報連相してこない。
 

 今夜はその続き。
 またも顔ぶれが変わる。
 同じ支社の仲間は、昨夜から及び腰で消極的な年配。
 昨夜彼が見せたその逃げ腰をあたしゃ今も軽蔑している。
 戦力はそれだけだ。
 あとは他支社の「はじめまして」さんたち。
 おそらく他支社に貸し出されるくらいだ。仲間にNGを出されたお払い箱レベルが顔を揃えるのだろう。

 
 昼には目覚めたが、なにをする気力もおこらない。
 どうにか半身浴はしてみた。
 自炊も面倒なのでカップ麺とレンチンの焼きおにぎりを食してみる。
 が、そのあとはただ寝転がって目を閉じたりPCでXの記事を眺めたり。


 現場経験も積まずに若いからというだけで内勤に引き上げられるこの社風。
 職長経験を持つ者すら一人もおらず、ただ注文のあった人数を配置すれば自分の仕事はおしまい、としている若造ども。


 もうそろそろ家を出なくては。
 

 生きてんのやだな、
 とバカにしやがって、が口癖になっている。
 よろしくない。
 そんなみっとみないことになっている。



 たしか書くことだけが楽しかったはずなんだ。かつての俺は。
 いまはただ書いても書いても無益だと。