緊急事態宣言といったって、権力というものを両刃の刃として認識しようとしないあたしらだ。
権力の縛りを弱めれば、その反面権力による守りも弱まることを平時は失念している。
だから肝心な時に強制できない。強制してくれない。
お前は人を刺すおそれがあるから、と刃をつぶさせた包丁で、今度は魚をさばいて皆に振る舞えなどと云ふ。いやちがうな、なんでもいいから出せと云ふ。けれど冷蔵庫の中身がこころもとないと。せこいと言われて残りものを使いまわして無理くりだしたところでさて次だ。次なる補填回収方法をあみだせないと。そんなこと知らんわい、てめえで考えろ、腹減った飢え死にするぞ、とテーブルでは子らが騒いでる。
だもんで『 要請 』で押しとどめるしかない。
その要請レベルでいかに収拾を付けられるか( 国家 )、また従ってやるか(国民)もふくめてが国としての総力、つまりが技量だろう。
いや器量といえるかもしれない。国の器量。
けど、このたかだか要請に真面目に従うところに良くも悪くも日本人らしさがあるわけで。
念のため繰り返す「 よくもわるくも 」。
震災時にいたるところで見かけた「 きちんと並ぶ 」日本人を思い出す。
なにしろあたしらケービ屋はそういう暗黙のルールのおかげで成り立っているのであーる。
路傍のガードマンの誘導に法的強制力は無い。
けど、そのおねがいの真意を察したり、状況や空気を読んだり、あるいは慣例として仮に腑に堕ちなかろうが従って、結果、全体的にスムーズにやりくりしてきたのだろう。
というわけで、
『 宣言 』をうけて、うちの会社には応募が殺到しているそうで。
その大半が飲食関係の人々ともきく。
宣言に電気ガス水道の公共工事は止めない、という意味のくだりがあるので、なるほどだ。
感染リスクを考えれば屋外で、なおかつ未経験可で、日当制だから早急に現金にありつける。というところに気づく彼らの瞬発力はお見事。
あとはプライドだな。勝負は。
ケービ員というものへの平時の蔑視が、この期に及んで壁にもになるし。
もしくは「 どうせちょろい 」と高を括る契機にもなる。
ともかく、
四の五の言わずにとりあえず動いたそのアクティヴさには感心する。
自身にへこむ猶予を与えないその活力。
けれど、こんなに人が増えちゃうと、現場の奪い合いなのだなあ。
いやいやいや、『 分け合い 』と言い直そう。
また彼らが戦力になるまでの期間を考えると、それを受け入れなくてはならないベテランたちは憂鬱だ。
緊急とはいえ大方が一時しのぎの「 腰かけ 」気分だろうし。
実際、ここのところ口応えする新人が多くてかなわんのよ。
仕事も覚えぬのにふてくされて大きな態度に出る。
しょせん一時しのぎの職場で、なんでそんな細かいこといわれなきゃならんの、な態度。
現場て、元請や常駐リーダー判断で『 出入禁止 』がまかり通る世界だからね。少なくともお金をいただく立場として、社会人としての常識的な言動をしようね。
めんどくさいことになってきている。
闇生