壁の言の葉

unlucky hero your key


 世の工事はどこも繁忙期。
 人が足らない。
 だもんで、ケービの現場で出くわす同僚の中には3連勤、4連勤なんて人が珍しくない。
 つまり日勤のあとそのまま夜勤に出て、っていう無理を重ねておカネをかせぐ『連勤術』ね。
 そんな稼ぎ方ができるのもこの時期だけだと、黄濁する三白眼でやさしく語っておられた昨日の相方もまた、その足で夜勤へと。
「十分間眠れましたよっ」
 休憩から帰還するや嬉々としてそう報告をくれた。
 おもしろいのはそれでいて彼らに悲壮感がないことかな。
 それぞれに事情はいろいろあるのだろうけれど、どうせなら、と楽しもうとしている。
 あたしゃ決しておすすめしませんが。
 

 あくまで各自の責任でやってください。


 それはそうと、
 そんな「どうせならみんなで楽しもう」ムードをぶち壊すような。朝っぱらから現場でケービ員と職人が一触即発のもみ合いに。
 なんてこったい。
「その言い方はねえだろ」
 このたかだか「言い方」ひとつでの衝突というのは本当につまらないものだ。
 問題の本質とはあまりに遠いところにこだわってしまっている。
 んが、
 その「たかだか」で物事がスムーズに、かつ穏やかにすすむのなら、そんな工夫なんてものはお茶の子さいさいである。
 屁のカッパである。
 いい大人がそれができずに。
 で、双方引かずに……、んだこらてめえ、と。
 見ていて恥ずかしかった。
 程度があまりに、ね。


 むき出しの正論てのは、無用な敵を作るものなのだ。
 
 
 コーディネートせんことには、
 デコレーションせんことには、駄目。
 まっぱはいかんのよ。まっぱは。
 そんなちょっとした心遣いもまた、先述とは別の豊かさを求めた、一種のレンキンジュツなのよね。
 
 


 川崎市宮前区鷺沼






 ☾☀闇生☆☽