壁の言の葉

unlucky hero your key

送り送られ。

 この日の夜勤は奇蹟的に早く終了。
 電車通勤組を終電に間に合わせようと、仲間たちでシフトを工夫した。
 新人や急の応援要請ならともかく、何年も夜勤を希望していながらアシを持たない人たちは、どういう了見なのだろう。
 当然、はなから始発を待つのを覚悟している人もいる。
 てか、そうあるべきでしょう。夜勤者たるものは。
 その日の仲間全員が電車組というパターンだって別にめずらしくないのだから。
 それなら理解できるのだが、アシのある誰かに送ってもらおうと下心を丸出しにしていつまでもアシ持ちの周囲に付きまとってくるやつがいるのね。
 かと思えば、
 乗せてもらったやつが、定員オーバーで乗せてもらえなかったやつに助手席からにっこりと手を振って送られていく。
 これもどうしたものだろうかと。
 送迎のお返しにパーキング代くらいは払っているのだろうか。
 全員を送り届けるとなると、ドライバーの帰宅は何時くらいになるのか、などと想像したことがあるのだろうか。
 バイクにまったく興味のないあたしが原付を買ったのは、早く終わった冬の夜勤あがりに始発を待つ時間を惜しんでのこと。
 寒いしね。
 時間をつぶせるところ、めったに無しいね。
 あったとしても、スマホ見てるか音楽聴いてるか、仮眠くらいでしょう。
 もったいない、もったいない。


 あたしゃね、気遣いされたくないし、したくもないのよ。
 自分のことはできるだけ自分でやりくりしたい。


 朝まで細かい粒の雨。
 クロスカブで国道をひた走る帰路、時間が早いのでタクシーにあおられる。
 小型二輪取得後一年は、二人乗りを許可されない。
 リアキャリアにはボックスをボルト固定してるから、すまぬ、
 乗せてあげたくても載せられないんだけどね。



 闇生