『あしぶみ電車 ビジネスホテル編』

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山中奈緒子著『あしぶみ電車 ビジネスホテル』
手製本
西荻ニヒル牛、旅の本展にて購入


ジャケ買いして大当り!

実を言えば、同シリーズの『あしぶみ電車5』も購入済だ。
んが、
あろうことか未読のまま積みっぱなしにしておいたのである。
なんせページを開けば、みっちりだもんで。
エンピツ書き(シャーペン?)のちっこい文字で、空間がこれでもかと埋め尽くされているもんで。
これが活字だったならわけはない。
手書きでかつ筆圧丸出しなものだから、
なんか情念ちゅうか、
soulっちゅうか、
ポジティブな執念めいた圧が、ただならないのだな。
イラストも手描きならではの温もりあふれるものだが、これまたあれだ、

精緻!

少なくとも一日のおしまいにウイスキー舐めながらでは、しんどいだろうと。
夜明け前に斎戒沐浴したうえで正座で音読すべきではないかと、
ハードルを上げっぱなしにしてうっちゃっておいた。

んが、どうだ。
今回のジャケ、買いでしょう。
古いビジネスホテルの昭和っぽさにこだわるテーマ、当たりでしょう。
で、
日当制の身にはあまりに長くつらい連休だもんで、これ幸いと読んでみた次第なのであーる。

ひとつには、前々回ここに感想を書いた石川あるの旅本『愛しのグルジア』の同行者であるという偶然も、好奇心を喚起するリンクとなっていたと思ふ。

おもしろいのは、
旅本であるのに取材対象が名所、名産、ご当地料理ではなく、あくまで宿泊施設(それもビジネスホテル!)であるという、そこ!
そのポイントだ。
外観の独創性はむろん、内装の古びて妖しいたたずまいや、今ではもう見かけなくなった照明のデザイン、均一でない浴室タイルのおもしろさなど…。

好きなものを誰はばかることなく好きと言い切る文章を読めるよろこびったらないね。
その『好き』の強度が、イラストの細やかさに刻み込められておるわけで。
スマホ撮りの写真とはちがい絵というのは製作に時間を要するため、完成にいたるまで執拗に反芻する『好き』の(あるいは『面白がる』)持続力が求められるわけであり。
それは確実に読み手に伝染するのだな。


食わず嫌いにしていたが、結果、一気読みござった。




袋とじの白江亜古『今生日記』も、
ぐいと読ませます。


闇生