なんだろ、寝ようとするとどこまでも眠れる。
あんなに眠ったのに、まだ眠れる。まだ眠れる。
気づけば五月になっている。
さすがにこわくなってくる。
GWの間は担当現場が休工ということもあって、時間に油断し放題なのがまたいけない。睡魔に拍車をかけてきやがんの。
おそらくは、どっぷりと夜勤なれしてしまったせいだろう。
狂うことを強いられつづけてきた体内時計とかいうやつが、狂気から醒めんとしてあがいているのだろう。
死んでいた電波時計が電力復活するや、正しい時間をおいかけて長針短針をぐるぐるやっている、あんなことが寝ている間に起こっているのにちがいないのだ。あたしのなかで。
あなたの時計が正気をとりもどすまで、わたしのなかでお眠りなさいとジュディ・オングがささやいている。
嗚呼、このまま抱かれていたい。
とはいえ、これが男の更年期というやつではないかとも思えてきて。
ましてや睡魔がジュディ・オングである。
このまま寝腐れていたのでは、後悔するに違いないと部屋を出た。
おりしもニヒル牛では恒例の『旅本展』が催されているではないか。
睡魔に憑かれて旅に出る元気など微塵もないが、西荻なら行けるだろうと。
てか、行けよ。
西荻くらい。
改札を出るや、かつてあった二号店の跡地を詣でる。
というか、足は勝手にそちらに向いていた。
むろん記念碑も、店主の銅像も、締まりのわるい木製のドアも、そこにさがっていたドアチャイムも柱時計の残骸もなく、味気のないおニューのマンションが建っていた。
ははーん。
そうでしょーとも。
そうなりまさーね、と目礼して本店へ。
目当ての第一希望は、なんつったってココマコムーン。
『地球無期限の旅シリーズ』の新刊だ。
旅本ファンたるもの、これを逃してはいけない。
けれど案の定、入荷してもいない。
順調に遅れているらしい。
長年、冨樫の連載再開を待ちつづけているあたしとしては、そんな数日単位の遅れなんざ、河童の屁である。
待ちます。
べつにお目当てはココマコ本だけではないのだな。
店主石川あるが、この一年の間にどこの国のどんな町をどんな愉快な(あるいはつまらない)連中とほっつき歩って、どんな目にあい、何を貪り、何を愛でて、どんな人たちと出逢って別れたのか。
それを報せる旅本が、毎度のことながら楽しい。
これも必須。
新作は題して『春秋航空で行く中国』。
旅は、それを土産話にしていく咀嚼の過程で、旅になっていくのであり。
むろん、おもしろい出来事だけではなく。
つまらないなら、つまらなかったという体験の共有もまた、旅の産物であるわけで。
それこそがおすそわけすべきご馳走であると、石川あるは体感しているのだな。きっと。
だもんで彼女の旅本は、つまらなかった体験はそのままつまらなかったと書くぜ。という面白がり方をしている。
まずい飯は、まずいし。
つまらん奴は、つまらん。と面白がる。
それでいて嫌味も皮肉もないのだ。
あるのは、ぶっとい女の逞しさ。
ちがうな。
女のぶっとい逞しさだ。
それと、おもしろさ。
今回は『重慶』『ハルピン』『武漢』を春秋航空で渡り歩いたとのこと。
地名が地名なだけに、戦争の爪痕とか、反日のなんたらとかにも触れるのだろうと構えていたが、さにあらず。
そういう賢しら気なのが読みたければ、べつに西荻に用はない。
司馬遼太郎で済んじゃうわけでえ*1。
旅の仲間もまことに愉快で、あたしゃ読みつつなんども吹いた。
それでいて、街のにおいを嗅いだ気までした。
今回のは、とりわけダレなかったね。
時間のあるときにじっくり、と思っていたのだが。
長文にもかかわらず熱量が持続しているから、やめどきがつかめねえんだ。
結局、読了してしまいました。
すんません。
ごちそうさまでした。
今回購入したのは、ほかに二点。
毎度買っているシリーズのひとつ『一人書店』平田真紀の新刊『家からすぐの旅 4』
それと、今回あたしにとって初購入の山中奈緒子『あしぶみ電車 5』。
どちらもニヒル牛の重鎮。レギュラー作家といえるお二方。
感想は、またのちほど。
というわけで『旅本展』西荻、ニヒル牛にて。
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最終日は、聞いたけど忘れました。
たしか再来週だったような。
逃すなよ。
追記。
ちなみに前回の感想はこちら。
yamio.hatenablog.com
☾☀闇生★☽