立哨中、
暇があるとセリフらしき独りごとを口にしながら、ひそかに小さくその身ぶりをするのだった。
この日は出入の工事車両が少なく、また土曜の某施設敷地内という条件も相まって比較的に暇で、そのためほぼ一日中彼はセリフをさらっていたようである。
傍から見ればあるいは滑稽だろう。
んが、あたしにすれば尊敬に値する背中なのであーる。
なんせそれでいて警備に一点のミスもない。どころか、かならず求められた以上の働きをなさるのだから。
休憩中、現在練っているネタもいくつか話してくれて、彼にとって創作し表現するということが当たり前の習慣になっているのだと感じた次第。
そういう人にとって「創作意欲」なんちゅーもんは、どこか余所余所しいしゃっちょこばった言葉なのではないのだろうか。
飯を作り、食べ、忘れたころにうっかり屁こいちゃうのと同じような感覚で、見聞し、吸収し、気付いたら創作し、表現していたようなものだろうから。
それは世間話にも現われていて、常に他者が呑みこみやすいよう意識的に話を構成しているらしい感触が、ある。
他人の話の受けに回った時も、その要点を別の例に譬えて客体化してみたり、場を俯瞰して風刺してみたりと。
それでいて彼の場合、根底にあるのは常にサービス精神旺盛なユーモア感覚であるからして、そこに少しも嫌みは感じられない。
一方あたしの場合、どんなに愉快なふりをしようが根底にある悲観がペーソスとして臭いだし、挙句、皮肉や嫌みとなってしまう。
彼に人望や人気があるのはそんなわけで、あたしにまるで人が寄り付かないのは、またそんなわけでもあるのだ。
とわかったところで、これ、直そうとして直るものではないし、無理に直したところでその無理がたたってかえって痛ましくもなるわけで。
うん。
そんなわけで。
☾☀闇生☆☽