湯浅 政明作、監督『ケモノヅメ』DVDにて
コピー曰く、
『愛した男は敵だった
抱いた女は食人鬼』
人を食ったような、とはこのことで。
人を食う鬼、食人鬼がニンゲンのナリをして社会に溶け込んでいるという設定。
その歴史は数百年におよぶらしく、『鬼封剣』なる剣術道場が代々その退治を務めてきたという。
コピーに云う『男』とは、その世襲制の道場の次代頭首と目される男。
師範の長男。
禁欲的求道者で、剣一筋に生きて来た武人でありながら、ここ一番の肝心な場面では腹を下すという弱点を持つ。
その弟は長男と違って革新的・政治的野心の持ち主。鬼退治にロボットの導入や広報活動に熱をあげる。
して『女』とは、ひょんなことから出会った宿敵食人鬼の、メス。
本来宿敵同士の二人は禁じられた恋に落ち、駆け落ちをするのだが……。
女が心のままに男を愛すほど、内なる鬼が暴走し男を食おうとしてしまうことに。
よってふたりは愛し合うことさえままならず……。
オープニングからして『野望ありまっせ』むき出しの演出である。
その昂りが作画の線に出てるでしょ、的な。
めまぐるしいでしょ、的な。
いんじゃないでしょうか。
かっこいいです。
ノらずにはおれますまい。
WOWOWでR-15指定放映というだけあって、エロも、格闘も、そんな具合の良さを呈している。
エロいっす。
食人。グロいっす。
過激で、刺激的なんじゃないでしょーか。
んなわけであっちうまに全巻を観賞したのだが、すまん。どこかものたりないのね。
ロミオとジュリエット路線の伝統的禁じられた恋を『ヴァンパイア=鬼』とみなして、昔話『桃太郎』を踏み台に現代日本に落とし込んだアイディアはいい。
しかもロードムービーの態である。
けれど、その桃と猿という意味ありげにチラつかせたキーワードも、単なる冷やかし的なアクセントにしかなっていなかったような気がするし。
ミイラ取りがミイラよろしく科学の力で鬼化し、暴走していくオオバさんの狂気に、根拠が薄い気がした。
つまりコンプレックス的なポテンシャルね。
バットマンのジョーカーのようで、えらい魅力的なんだが、いま一歩か。
野田秀樹の『赤鬼』のように、ひょっとして彼らを差別する我々の方こそ『鬼』なのではないのか、というような価値観の裏返りが、ここに無いのが致命的かな。
そして、ああまで世間を騒がす事態なのに『大衆』が欠けているのも気になった。
とまあ、そこまで重くしてはせっかくの軽妙さと刺激が緩衝されてしまうのかもしれないが。
エンディングが素晴らしいです。
耳にこびりついて離れない。
そのエンディングにどう繋ぐのかというのが毎度の愉しみでした。
対して、
オープニングの寸劇は、途中から飽きてました。
オチがパターン化してしまったので、たるい。
別視点が欲しかった。
そのせつなさ、
狂おしいほどなのです。
☾☀闇生☆☽