壁の言の葉

unlucky hero your key


 今でもいるのだなあ。
 冬でも半そでで頑張る小学生。
 闇生は本日のケービ中に目撃しましたよ。
 先生らしき女性に引率されたなんか社会科見学っぽい集団のなか。
 ひときわおどけて騒いでいる少年がそれで。
 あたしらの頃は半ズボンも居たが、
 さすがに今日の集団のなかには居なかった。
 かく云うあたしもかつては結構頑張っちまったクチなのであーる。
 頑張っちゃう理由なんか鼻毛の実ほどもないのですが、
 そこはひとつコンジョーとか言って頑張っちゃう頭の悪さこそが、子供なのであり。
 とどのつまりが少年なのだ。
 で、
 理屈なんかあとからついてくるのさ、
 とうそぶくだけじゃ飽き足らず、ついに逃げ切ってしまうのだな。理屈から。
 振り返れば独走状態。
 この走りっぷりが、
 ぷりっぷりっとして、
 ひょっとしたら曲がり間違えてうっかりモテんじゃねーかと。
 突き抜けたおバカならそれもあり得たろうが、有体はというと冬でも半そで半ズボンという、ただそれだけのことだ。
 そもそも意地の張りどころを間違えておるのだからして、女子からしてみれば好意のとっかかりがまるごとつるんと、もげているようなもの。
 去勢されてる。
 ならば、
 せめて面白い奴で居ておくれ、と。
「誰よりもたくさんわたしを笑わせて」
 なんて声がどこからともなく聴こえてくるのだな。
 それゆえ半そでは、無駄にひょうきんで。
 して、きっとそんな声は幻聴だ。
 真冬に半そで半ズボンなのだから、そんなハイテンションにもなろうともさ。
 

 ともあれ、
 いつの世も、半端なおバカに手向けられるのは憐れみか、
 ただの驚愕か、
 もしくは黙殺しかないわけであり、疲れるから周囲もリアクションのとりようがない。
 それに気付いてか、
 はたまた単になよっただけなのか、
 そんな少年は何故かしらハイソックスをはいてたりしたものだった。
 せめてせめてスネだけは、と引きちぎらんばかりに引っ張り上げたハイソックスを、姉のソックタッチで厳重に固定すんだ。
 わかってんだっ。
 そこまですんなら、もう着ろっつの。
 ジャージでいいじゃんか。
 なあ、
 さみいんだろ?
 着ようよ。


 






 まあ確かにすでに三月ですけど。
 今日なんか雪ふるんじゃないのってくらいの寒さだった。
 日中でも吐く息が白くて、日がな一日ぷるぷるしてたよ。
 あ。
 そうそう。
 今日の現場は立派な桜の木が庭に林立するアパートで。
 住人の方に、開花したら見事でしょうね、と声をかけたら。
「花びらの掃除がたいへんなのよおん」とのこと。
 して、幹の中ほどからぶっつりと折れたのを指さして、
「一本折れたから、そのぶん楽になったけどさ」
 なんでも、若い住人は草刈りも掃除もせず、
 年寄りばかりで世話をするので、大変なのだそうだ。






 耳が痛い。




 ☾☀闇生☆☽


 ちなみに上の写真はとある幼稚園の避難用滑り台に取り付けられたバリケード
 おしい。
 くまさんまではよかったが、
 設置の段階で、その両手に穴をあけてしまうとは。
 はからずもはりつけであーる。
 大人のやっつけは、いつも哀しい。