「脳ミソとりかえてくださーい」
ケービの持ち場にて。
工事車両の搬入口近くの路上で、子供たちが遊びはじめた。
公道である。
ここは道路だから遊んじゃだめね。空き地じゃないんだから。
そう注意をすると、一旦は逃げ散ったのだが、物陰に隠れていっせいに囃したててくる。
曰く、
「ここは道路じゃないんですけどぉ。ゴミ箱なんですけどぉ」
「あたまダイジョブですかー。おじさん」
「脳ミソとりかえてくださーい」
男の子たちがそう叫べば、女の子たちがそれを煽る。
ううむ。
罵倒の論理展開にまるで芸がない。
すっからかんだ。
せめて「王様は裸だ」的な、子どもゆえに見える本質を突きつけて我が双眸からウロコを剥ぎとってはくれまいか。
この不毛ぶりは、はたして遺伝によるのか、しつけなのか。
まるだしとなった低能ぶりに、こちらが赤面してしまうはめになったのであーる。
親の顔が見てみたい、とはよく言ったもので。
いつの世もガキんちょってものは。
なるほど、あたしだってこんなもんだったのだ。きっと。
ぷるるんっとフリチンだった。
そんな少年の日なんぞ、美しいわけがない。
少年がピュアであろうはずがない。
などと思ったのだが、この度はふとそれを思い改めた。
この、物陰に隠れて罵る野郎自大な風情。
日夜ネット上で大人たちがやらかしているのとなんら変わらんではないかと。
それをまた外野から煽る連中までもが。
ニンゲン、一生かけたってそう成長できるものではない。
あの子たちもまた、大人になって同じことを繰り返すのだ。
不平屋は、不平屋に。
野次馬は、そのまた尻馬に乗って。
ともあれ、
この手合いは強く叱ると、今度は親がクレームしてくるからね。
ケービ屋としては対応が難しい。
けど、現場監督はさすがに毅然としていた。
きちんと叱り、小学校名などを問いただしていた。
繰り返すが公道である。
10トンクラスのダンプが行き来する。
今日は今日で近所のおっさんが通りすがりに叱り飛ばしていたよ。
こらあっと。
むかしはどこの地域にもいたいわゆる『カミナリおやじ』なのでしょう。
あたしもよく近所の飲んだくれに怒鳴られたっけ。
麦畑でかくれんぼをしてて。
崖っぷちを探検してて。
溜め池に棄てられたエロ本を渉猟してて。
ならば、あれだ。
まだまだ捨てたもんじゃないというやつだね。
うん。
☾☀闇生☆☽