物議をかもしているストリートビュー。
Googleの新しいマップサービスということですが、使ってみました?
なんでも、パソコンの前に居ながらにして、行った事のない街角を実際に歩いているような、そんな仮想体験ができるシロモノだとか。
ともかくも、あたしゃヒマにまかせて試してみたわけなのだ。
あらま。
なんてこったい。
実際に撮影した画像をもとにしているから、そこに晒される営みの生々しさといったら、ない。
なにより、隠し撮りならではの、人々の『素』の具合。
ひいては、日常のすっぴんを覗けてしまうのには驚いたのなんのって。
モデルに作為がないだけ、下手な写真家のスナップよりよっぽど面白いんだ。
覗きの愉悦だな。
安部公房の『箱男』だ。
そう思うと同時に、あられもなく自分の日常テリトリーが露わにされちゃってんのには、いやん、と。
そこ見ちゃだめぇん、と。
公道からの撮影であるからして、法的にはおとがめなしのようなのだが、はて、マナー的にはいかがなものなのよ。
さすがにこれではプライバシーへのレイプになりかねん。ということで人物の顔にはモザイク処理を施したというのだが、さて。
おそらくは顔を認識するソフトでもって自動で処理しているらしく、その証拠にとんちんかんなところにボカシがかかっていたり。
化粧品のポスターのおねーさんにはボカシが入ってるのに、その横を行くおっさんの赤ら顔はなぜかスルーされてて。
はたまた、坂道をゆくご婦人方。
そのなかのひとりだけ顔が丸出しになっている。
ミソっかすである。
なにゆえお前だけが、と。
顔と認定されなかったのは、この顔ですよと言わんばかりにだ。
「見る暴力。見せる暴力」野田秀樹。
むろん、マップトラベラー的な愉しみ方ができるのは、大きいでしょう。
けっこう、遊べっぞ。
んが、安部公房の『方舟さくら丸』の主人公のような、筋金入りのマップトラベラーなら、想像する愉しみを奪うなといったところだろうか。
(なんせ奴は、同じ地図を並べてステレオグラムで妄想の旅をするのだ。)
んなことよりやっぱ、実用性なのか。これの魅力は。
利便性とも言おうか。
未知の土地を、あらかじめシュミレーションしておけるぞと。
デートの待ち合わせに、
出張先のリサーチに、
テロの計画にもお手軽だとか。
となればだ、節操無くこれを使っていると、日常のささやかな冒険や発見までも、手放してしまうことになりかねない。
過剰にネタバレを警戒するご時勢だというのに、そういうのに関しては不思議とネタバレOKだったりするものなのだな。あたしたちゃ。
そうそう、不肖闇生の、この拙いブログで一番アクセスがあるのが、何を隠そうネタバレ感想なのですな。
ありがたや。
やっぱ、なんだかんだ言ってもネタバレ好きなのね、みんな。もお。
えっち。
むっつりスケベ。
にしては、言うほどネタバレじゃないじゃん、ときびすを返されている始末だと思うのだ。あたくしなんぞのでは。
なんせ、
『犯人は、太郎だ』
式のネタバレをするのには興味がないのだもの。
過剰なまでのネタバレ恐怖症の方々のためにと思って、そう題しているわけ。
めんぼくなし。
たとえ直球ネタバレをやったとしても、映画や本を語りつくせるものではないのだし。
それを知ったからといって、映画を観たことにはならんでしょう。
ネタバレで語り尽せてしまうようなものなら、そもそも映画も本も作る意味が無いとまで思うのである。
だからあたしの場合は、ネタバレ情報はけっこう平気なのである。
でなきゃ落語なんぞ、楽しめるわけがない。
ちなみに、
マンガで読む『カラマーゾフの兄弟』は、あくまで「マンガで読む」という前振りあってのものだ。あれを読んでも決して小説『カラマーゾフ〜』を読んだことにはならないし、そもそもあれは小説から独立したマンガですらない。
あくまで「マンガで読む」である。
攻略本か。いやあれこそがネタバレ本ではないのだろうか。
楽に知っておこう、という我々の好奇心のナマケに媚び、…いやいや、サービスしてくれているという。
言い換えれば王☆欣太の『蒼天航路』は、決して「マンガで読む三国志」ではないということだ。
ネタバレで伝わってしまうのなら、作り手は映画なんぞ作らずにブログでもやっていればよいわけだもの。
とまあ、しがないエロDVD屋の言う事だ。
イジケてると思って、そっとしといてくれ。
でね、
なんでもかんでも教えてもらおうとする『教えてちゃん』が煙たがられるのはわかる。
「自分で検索しろよ」と。
けれど、なんでもかんでもネットで調べてしまえる哀しさもまた、あるわけで。
無駄をそぎ落とした情報のツボだけを、さながらサプリメントのように摂取するのが、味気なく思うときだって、あるのさ。
なんせ、あるんだな。
たとえばメールで、チベットの問題とかに触れたとするでしょ。
するとさ、それについて詳しいサイトのアドレスだけを貼って、返信されてきたりするのだ。
「ここ読んでミソ↓」とかなんとかね。
おいおい、と。
そんなにめんどくさいか。
知りたいのはあなたの目を通したチベットなのだ。
これからはますますネットで済んじゃう世の中になるから、そうなるとますます人と人の距離は、実際は、隔たれていくんだろうなぁ。
たとえば、
目的地への道順だとか、そこへいたるまでの景色の形容をするときほどの言葉の使いどこは、日常あまりない。その表現の豊かさや、蛇足や、言葉足りなさに、その人の視点や人柄がふんだんに含まれているから、おもしろいのであってね。
それもいずれ、
「おまえんち、駅からどう行くの?」
「ストリートビューで検索してミソ↓」
なんて扱いになるのだろうなぁ。
グローバリズムでもって画一化がすすめられるほど、どんどん世界が窮屈になっていくような気がするのは、あたしだけでしょうか。
でしょうよ。
そうのたまいつつも、利便性にかまけて、こういうのちょいちょい使っちゃうんだ。俺ってば。
ストリートビュー。
どこまでリアルにネタバレできるようになったとしても、そこに実際はない。
だから、大好きなPSのゲーム『クーロンズゲート九龍風水傳』とか『RIVEN』を思い出したよ。あれでカメラが目の高さならば、もろ。
ひょっとしたらこのまま食堂に入れんじゃないかって、思わず自動ドアをクリックしてしまったおバカさん、闇生がお届けしました。
☾☀闇生☆☽
「広い世界はまだどこかに残ってる♪」
ICE『FUTURE』より