諸星大二郎の新刊が出ていたので、衝動買い。
『未来歳時記 バイオの黙示録』集英社
過去八年にわたってウルトラジャンプに単発的に掲載されていたもの、だという。
一年に一話のペースだそうだから、読み切り扱いだ。
ならば短編集かとおもいきや、これが違った。
どの話にも遺伝子操作の暴走によってうまれた、人間と動植物のあいのこが登場するのである。
おそらくは、そのモチーフの共通性を活かしたのだと思う。
単行本化にあたって新たに幕間劇で各話をつなぎ、加筆修正をほどこして、一本にまとめたと。
そう受け取ったのだが、ひょっとすれば、はなからそういう企画だったのかもしれない。
裸体の女性そっくりの雑草が生えたり。
はたまた蝶の羽が生えて、空を飛べるようになった少女。
井戸端会議よろしく、うわさ話に喧しいニワトリたち。
まっさきに連想したのはアメコミのX-MENだった。
遺伝子の突然変異で異能を持つようになった者たち。
けれど、諸星作での彼らは、徒党を組んで世直しをするわけでもなく、人間たちの絶滅をはかるわけでもない。
動植物間のあいのこがあたりまえとなって、やがて、それらの境界がなくなるのを、じっと待っているだけなのだ。
ご破算を。
バイオの風を。
ここには傑作『マッドメン』や『孔子暗黒伝』に見られた呪術的な要素はなく。
むろん『妖怪ハンター』シリーズに顕著な、日本の伝承に依拠するものでもなく。
どちらかといえば『不安の立像』や『夢の木の下で』のようにイマジネーション優先で綴られるものに近い。
きっとその路線での発想だろう。
なのに、きちんとオチをつけているところは、さすが。
しかし、
どろりとした諸星節を期待するファンには、すっきりしすぎているかもしれない。
ともかく、
諸星にしてはメッセージが直球だし、布石がすっきりと回収されているところが、闇生にとっては新鮮だった。
シンプルで、にもかかわらずイメージにあふれていて、傑作だ。
☾☀闇生☆☽