ゴールデン・ウィークである。
されどエロ屋は通常営業なのでござる。
なんせ黄金・週間だもの、
いっそ『黄金』モノの特集でもぶちあげようかと。
ふてぶてしいのを、ぶちまけちゃおうかしらと。
そう気づいたのだが、ときすでに遅し。
すでに連休のまっただなかなのである。
こちとらカレンダーの赤文字とは無関係な生活だ。
それを長年こじらせてもいるわけだ。
てか、それしか知らないもの。
だもんだから、うっかり忘れとったという次第なのであーる。
面目なし。
ともかくもお仕事、お仕事。
とまあ、あたしのように休日こそが稼ぎ時という方も、世間には少なくないだろう。
連休のあいだも滞りなく世の中がリズムを刻みつづけているのが、その証しであるのだし。
電車にしろ、
飛行機にしろ、
デパートにしろ、
警察にしろだ。
そこに従事する彼らは、社会がOFFのときにONでいる人たちだ。
おのずとテンションは朝っぱらからハードコア・テクノを決め込むのである。
一方、世間さまにとっては行楽なわけで。
つかのまのOFFなわけで。
ここぞとばかりにテンションはギアダウンされ、どどんがどんの音頭調といったところではないだろか。
互いに持ちつ持たれつ、かわりばんこにスイッチングしているのは、言わずもがな。
さてさて、
この双方のビートの違いが、みょうちきりんな摩擦を生んでしまうことがままあるようでして。
いや、あったの。
それは先だっての、桜が満開をむかえた週末だ。
都心へ向かう特急電車のなかのこと。
そこはON人もOFF人も一緒くたである。
つり革を握った手が下ろせなくなるほどの、ぎゅう詰めで。
子供からご老人までのOFF族は、おしゃべり声も賑やかに、ON族を圧倒していたのである。
とそこへ、ひと組の家族づれが。
子供二人の手を引いて、水筒やらぱんぱんに膨らんだリュックなんかを、こともあろうにベビーカーにのせて乗り込んできた。
行楽オーラ全開だ。
突撃〜♪てなのりで、顔が華やいでいる。
案の定、ベビーカーの周囲の人は、足場をとられ、電車がゆれるたびに転倒しそうになっている。
周囲にとっても、彼らの子供にとっても危険極まりないわけで。
その殺気立った空気を、あたしゃi-PODの大貫妙子にまぎらわせてもらっていたのだが。
しばらくすると、音の隙間から声がもれ聞こえてくるではないか。
見ると、どうやら言い争っているようで。
たまりかねたのだろう。スーツ姿の若者が、ベビーカー一家に異議を申し立てている。
見るからにびんびんのON族である。
ドランクドラゴンの痩せのほうみたいで、血の気がない。
それが憤懣やるかたなしといった風情で、声を荒げているのだ。
んが、
あたしにゃ大貫妙子。
『happy-go-lucky』
つまらんことにぷりぷりしている自分が、アホらしく思える曲の真っ只中。
罵声は、断片的にしか聞こえないのである。
曰く、
「この国は内需が」
「外資を」
「働かなくちゃいけないんですよ」
「これから仕事ですよ」
なんなんだ。
若者よ、
おだやかにベビーカーを指摘しさえすれば、それでよいのではないのかな。
挙句、相手の父親の職業まで問いただす始末だ。
とうとう母親が逆切れして、
「子供に言わなくてもいいじゃないですか」
なんのことだ。
どうなってんだ。
ベビーカーについて言えばね、乗せるなとは言わないさ。
けれどこれは特急電車で、寸刻をあらそうON族でごった返しているのである。
都心への突撃をまえに、臨戦態勢なのである。
ならばだ、いっこギアダウンした準急とか、
快速だとか。
顰蹙を覚悟で言わせてもらうなら、すいている各駅停車でのんびり行くのが、双方にとっても望ましいのではないかと、思う。
ましてや、行楽だもの。
往復の行程もふくめて、思い出になるのだもの。
子供を思うならば、ぴりぴりした満員電車をさけて、各駅停車で楽しくおしゃべをりしながらというほうが、うれしいはずだと。
おいしい休日だと。
んでね、
ドランクドラゴンについて言えばだ。
勇気をもって指摘したまではいいさ。
見上げたものだよ屋根屋のふんどし、だ。
けど、残念。
いかんせんピントがズレてるし、ああまで声を張り上げたらかえって迷惑。
てんでHappyじゃないのだな。
周囲のお嬢さまがた、おびえてるし。
いや、キレかけてる。
けど、彼のその蒼白な顔が、いろんな意味でコワイのだ。
案の定、
「降りてください」
だなんて、どこからともなく声があがった。
さもありなん。
正義にかこつけた八つ当たりまるだしなのである。
新社会人よ。
まるだしはかっこ悪いのだぞ、まるだしは。
エロ屋が言うのだから、間違いない。
☾☀闇生☆☽