Jazzをだな、
耳でなく、
頭でなく、
はじめて視覚と肌で体感したのがこのアルバムだった。
おそらくはマニアにとってベタすぎるほどの名盤なのだろうけれど。
ビデオ屋の雇われ店長さんをやっていた頃、欠員の出た姉妹店の店番をまかされたときがよくあった。
ちょうどこんな真夏日のある日。
午後にどやしつけられたような夕立があって、なぜかその時間帯だけ客がいなかった。
窓の外には土砂降りの初台。商店街。
店内はあたくしひとりぼっち。
そのときかけてたのがこのアルバムで。
Jazzといえば夜の街と酒とタバコと孤独、というありきたりのイメージしかなかった自分にとって、その明るい豪雨とスイングの疾走感のマッチングに鳥肌が立ってしまったのだ。
なんだろう、
痛快。
理屈云々ではなく、
むろん過去の記録物の観賞としてでなく、
状況としてキモチイイと、
カッコイイと、
得体の知れない鳥肌はそんな落ち着き方をしたものである。
メンバー全員が二十歳前後。
どの曲もどのソロも甲乙つけがたく絶品であーる。
スキップ曲がない。
なかでもリー・モーガンのトランペットは目まぐるしく、フィリー・ジョー・ジョーンズのシンバルワークと相まってそれはそれはまばゆいばかりで。
カーティス・フラーのトロンボーンの心憎いほどの歌心といったらなく。
むろんコルトレーンも、抑えようのない情動が躍動して止まらない。
とまらねえとまらねえ。
このときのスタジオはいったいどんなテンションだったのだろう。
ある意味、いっちゃってるよね。
狂気としてではなく、覚醒として。
全員が同時にそんなテンションを迎えてしまっているからそれぞれ自覚できてないのかもしれないけれど。
一時期、このアルバムを基点にメンバー全員のリーダー作を漁ったほどだった。
1. Blue Train
2. Moment's Notice
3. Locomotion
4. I'm Old Fashioned
5. Lazy Bird
JOHN COLTRANE: Tenor Saxophone
LEE MORGAN: Trumpet
CURTIS FULLER: Trombone
KENNY DREW: Piano
PAUL CHAMBERS: Bass
PHILLY JOE JONES: Drums
景色を肴に。
ベースがぶんぶんうなるようなでかいおとで、浴びるべし。
☾☀闇生☆☽
アルバムのアクセント。
バラード曲I'm Old Fashionedも当然のことながら名演。
沁みるよ。
もってかれるよ。
とても二十歳前後の若造の演奏とは思えない。