壁の言の葉

unlucky hero your key

 芝居をやっている先輩ケービ員。
 五分とか十分というわずかな休憩のたびに、こっそりと電柱のかげでセリフをさらっている。
 さながらエア演劇状態だ。
 そもそも演劇自体がエアなのだが。
 左右にいるらしき役者を相手に、なにやらにぎやかそう。
 ちかぢか、公演でもあるのだろう。
 目が合うと我に返ってごまかすので、見て見ぬふりをしておく。
 して、さりげなく背を向けて、あたしゃ心でこう叫ぶのだ。



 かっけーぞ、このっ。




 存在証明と言おうか。
 そうでなくっちゃ、
 ガードマンやってる意味が無い。





 ☾☀闇生☆☽