壁の言の葉

unlucky hero your key


 マウスが、ぼっこわれた。
 反応しない。
 机にぶち当てて叩きおこし、どうにかポインタが効くようになったかと思うと、今度はスクロールができない。
 またぶち当ててスクロールが生き返ったかと思えば、今度はクリックが効かない。
 どうしたどうした。
 眠るなっ。
 ねたら、死ぬぞっ。
 揺り起こそうとするのだが、もうだめ。
 思うにおまえ、よくやったし。
 これにて、さらば。置いていくけど。
 しかも、振り返らないし。
 きっとあたしゃお前を思い出しもしないけれど。
 お前はあたしを胸に刻め。
 その左クリックボタンの、塗料の禿げからチラリと輝く銀色に、きっとあたしを刻みこめ。
 うん。
 少なくともここへきてあたしをちょっち凹ませてはくれる存在ではあったのだと気付いたよ。
 えらかったぞ。
 マウスよ。
 たかがマウスよ。


 と、


 いま店のパソコンでこっそり書いているのだが。
 なにも長文で弔ってやるほどのことでもないよねえ。
 帰りに電器屋に寄って買ってかえればよいのだけの話だもの。
 けっ。お前の代わりはいくらでもあるのだよ。
 んが、
 今日はその暇がないのだよ。
 こうしてうだうだ個人ブログを更新する時間はあってもだな、拘束を解かれるや、用事があるのだよ。
 タイムカードを押すや、まっすぐ電車に乗り込まなければ間に合わない用事を作ってしまったのね。自分で。
 ということは、
 また一日、パソコンが使えないという。
 ああ、そうさ。使えないやつさ。
 ってどっちが、という話なのさ。


 今週はあきる野市の某現場まで片道一時間四十分。
 自転車で行ったった闇生であーる。
 おつかれ。
 初めて『列車見張り番』という特殊なケービ資格者のかたと現場を共にしまして。
 制服もまるでちがって、ど派手でしたわあ。
 なんでも、鉄道各社によって、制服の規定が異なるのだそうだが。
 要は、
 無線での自動案内と、取り寄せたタイムテーブルをもとに、電車の接近を工事作業員に予告、通達する役目の人なのね。
 あたしの方は通常の交通誘導でしたけどね。
 めったにない機会なので、休憩時間に根ほり葉ほり質問責めにしてしまいました。
 すんません。
 特殊な資格だし、
 なおかつうるさい縛りもあるので、継続してやり続ける人は、多くはないとのことでした。
 ようするに、代わりが少ないと。
 だもんでこの度は、
 ダダこねて特別に交通費を先方さまに交渉してもらって、んで、出してもらったのだと。
 他方あたくしは、いくらでも代わりのある身分だもんで、出してもらえません。
 それはもうパソコン導入時についてくるスカスカのマウスみたいなもんだからして、出ません。
 そもそもダダのこねようもないんですけどね。
 ま、いいんです。
 いいんです。
 現場近くのブックオフで、探してた本を見つけましたから。
 思わずガッツポーズよ。
 いまどき『ガッツポーズ』ってのも恥ずかしい日本語だが、そこはひとつガッツポーズだ。
 来年の書初めのお題にしたいくらいだ。
 ガッツポーズ。
 加えて久しぶりにじっくりとi-POD聴き倒しましたから。
 多摩川のサイクリングコース。
 往路は落語。志ん生文楽。円生。小さん。
 復路はウォーキング用フォルダ『aruke』を。
 現場もはやく終了したので、
 心地よい疲労感を風になぶらせて、帰りました。
 終わりよければすべてよし。
 だははと笑っておつかれした〜♪と〆られる一日は、マウスにとっても気分がいい。
 数ヶ月ぶりのICEに、ひりひりしたね。







 なんとかにも五分の魂、だそうだよ。





 ☾☀闇生☆☽