思えば、
あれから何年経つのか。
劇場で出くわしたこの作品の予告編に、
やられ。
とりわけ、あれだ。
おもわず「ずりいよ」と、
そううめきたくなるフィッシュマンズの名曲だもの。
『ナイト・クルージング♪』
その使用とあいまって、
画素の粗いインディペンデント臭むんむんの夜の街に、
してその青い光に、
胸底のなにごとかをもっていかれ。
いかれて。
いかれちまって、今日に至ると。
当時、あたしゃちっぽけなレンタルビデオ店の店長さんであった。
この作品がビデオ化されるや、
個人的な思い入れと、
己が嗅覚だのみで発注したはいいものの、
あえなく本部に却下されちまったという。
代わりにわけわからんヤクザのドンパチと、とりあえずおねーちゃんのおっぱいが出てくるVシネを入れられて。
稲川淳二の怖い話みたいのとか。
そんなこんなを、あたしゃいい歳こいて今でもネにもつ。
そんなヤツだ。
ん
で、
あちこちビデオ屋を捜し歩きはしたものの、
結局のところ出会えずじまい。
ああ、
なんで劇場公開を見逃したんだろ。
55分の短編と知って、
二の足を踏んだ己のケチくささも苦々しく。
若々しく。
されどさらさらと時はたち、
いまやネットでレンタルできてしまう時代とあいなった。
山本浩資監督作『ランデブー』
友人ユウの葬式からの帰り。
酔いつぶれて終電を逃した男トオルは、
河へ身投げをする女ナオを救うことになる。
奇しくも彼女もまたユウの友人だった。
共通の友人を亡くし、
けど初対面の二人は、
やり場のない感情を持て余して、
夜の街をあてもなく歩く。
終電から始発までの、
出逢いと別れ。
彷徨う二人。
言葉は、
ときに脈略もなく。
であるからこそ生々しく、
蒼い。
その蒼さはこの映画の蒼さであって、
若さであって、
苦さでもあって、
ひたむきな不器用さでもある。
そりゃ粗をいえば、山ほどあるさ。
けど、
それらがそっくり、この映画の捉えようとした若さになっているのは偶然だろうか。
撮らずにはおられなかった、
という蒼き業。
感受すべきは、その空気だ。
アメリカ映画的な大味しか食せない人は、
やめといたほうがいい。
☾☀闇生☆☽
今見ると、
テレフォンカードを使う風情って、なんかかわいいね。