がん検診。第二部。
バリウムと発泡剤を飲んで消化器系の撮影をした。
前日の午後八時以降から飲み食いの一切を禁じられていたので、うっかりをやらかさないようにと気を使ったね。
蛇口に『飲むな』とまで張り紙したし。
まずは今週とった二日分のうんちを提出して、それからいざ検査へ。
検査名は『上部消化管造影』。
漢字ばっかだ。
不肖闇生の食道、胃、十二指腸を調べてくれるのだという。
ごあいさつがわりに筋肉注射を一本、肩にうってもらう。
胃の動きを一時的に制御するためだという。
かたじけない。
して、
床に対して垂直に立てられたベッドに張り付き、指示されるままにバリウムを飲むと。
大きめの紙コップに満たされているのを、一口ずつ。
きっと食道から胃へ落ちていく道筋をチェックしているのだろう。
やがて飲み干すと、ベッドの角度をそこから九十度倒して平行にする。
あるいはさらに傾斜をかけたりして、バリウムを各消化器官へ落としていく流れだ。
その間、マイクの指示に従って仰向けになったりうつ伏せになったり、横を向いたりとぐるぐるとせわしく寝返りをうたされる。
ベッドを操作して、寝返りの指示を出す医師としては、気分はたぶんあれだ。
ピンボールゲームの、迷路の作られたボードの方を操作して、ボールを出口へと転がして行くやつ。
あんな要領だと思う。
ゲップを我慢せにゃならんし。
まあ、
ちょっとした運動ではあった。
結果は、数週間後。
おたのしみに。
そうそう。
大きな病院なので、なにかにつけて指示されるままにうろうろと院内を歩かされる。
各部門がこまかく分かれていて、それぞれの窓口に番号がふられててさ。
「次は14番へ」
なんてね。
それはそれで合理的なんだろう。
けれど、あたくしという個人に対して大病院という組織の関係だ。
であるからして、こちらの印象としてはぼんやりとしているのだな。
磁気テープのついた診察券を端末に通して来院を告げ、プリントアウトされた指示に従い、窓口から窓口へと巡回して、最後にまた端末に診察券を通して料金精算をする。
たかが検診だけれどさ、担当のガイドのような個人がはっきりしていると心強いと思った。
すまぬ。
いい歳こいてさびしがり屋なのだよ。
☾☀闇生☆☽